空から降って来た不思議な少女。
寡黙で多くを語らない彼女の神秘的な姿はアラジンを、アリババを、モルジアナをあっという間に魅了し、旅は道連れ世は情けだと共に旅をするようになり早数週間が経つ。
同じ女といえどあまり前線での戦いを好まないお名前と大量の荷物を悠々と抱えるモルジアナが並んでいる姿は何とも言えない。

違う世界からやって来たと言うお名前と、自分たちは何が違うと言うのだろう。
今こうして共に旅をしているとお名前が異質な存在であることを忘れてしまいそうになる。


「そういえばさ、お名前がいた世界には野生の魔物が出たりするんだろ?」
『うん。結構頻繁に』
「なら商人の人たちはどうしてたんだ?街の間の移動なんて危なくないのか?」


俺少しの間は馬車で街を渡ったりしてたんだぜ、とアリババが言えばお名前はふと自分の"前までの常識"を思い出してみた。
ロイドやコレット達と旅をした間でも、あまりお名前は仲間たち以外の人物と関わろうとはしなかった。
故に商人がどうだったかと言うと正確に思い出せないというのが一番の言い訳。
そしてあちらの世界の常識はどこまで通用するのか。
最終的には分からないが考えるのも面倒だとお名前は結論を出した。


『乗せてもらった商人さんの馬車が襲われた時は私たちで倒してた』

「………お名前おねえさん、戦えたのかい?」
『…言ってなかった?』
「はい」


モルジアナに言われてしまえば言葉に押し黙る。
いや、押されなくても息子の名前は黙るが。


「でもお名前、剣とか武器とか持ってないだろ?モルジアナみたいに怪力な訳じゃないだろうし」
『うん。私魔術士だから』
「魔道士!?」
「おねえさんは魔法が使えるんだ!」


今までお名前が持っていた杖の意味を把握した3人は途端に目を光らせた。
モルジアナは瞳の奥にその羨望の眼差しを隠したがお名前にはばれている。
しかし特にわかりやすい反応を見せるアリババを見れば言わなければよかったかとすら思う。


「なぁお名前!なにかやってみてくれよ!派手なヤツ!」
『…やだ』
「僕も見てみたいなぁ!」
『……』
「お名前さん…」

『…はぁ』


小さくため息をついてお名前は杖を構える。

―久々に派手にやってみようか、できるだろうか。

こちらの世界では薄いマナの力を1つに。
羨望の瞳で見つめる3人を視界に入れて集中力を途切らせないように瞳を閉じて。
徐々に暗くなっていく空。
ピリ、と空気が張りつめお名前の瞳がゆっくり開かれた。



『インディグネイト・ジャッジメント』



雷と共に召還された巨大な断罪の剣。
被害が加わらないように少し遠くの森に放ったそれが大きな雷鳴と地響きにより全員の身を震わせた。

自分たちの立っている大地の視界が元の姿に戻る。
こっちでもできるんだ、と思ってお名前が自分の掌を閉じたり開いたりして感覚を確かめるがどうやら問題はないらしい。
しかし自分の掌から顔を上げれば輝いた瞳が6つ。


「すげぇえぇえぇえ!マジかっけーな!」
「かっこいい〜!ねぇねぇ、他にはどんなのがあるの?」
「気になるよな!な、モルジアナ!」
「私も…見てみたいです」

『………え?』


見たこともないような顔をしているお名前に3人は首をかしげてどうしたんだよ、と一言。


『後ろ』

「「「え?」」」


4人の目の前にはこれまた見たこともない、明らかに普通の形ではない植物が蠢いている姿が見えた。
心なしか、どこか怒っているように見える。


「まさか」
「……今の攻撃が」

『当たったみたい』

「逃げろぉおおおおお!」


あっちもこっちも、旅をしている途中の感覚はなんとなく似ている。
あわただしい仲間に囲まれていることに、お名前は悪くないと思って今日も"こちら"の世界を生きるのだった。





交わらない類似する世界

(例え世界が変わっても)
(私は元気に生きてます)




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幽華凪さん、370000キリリク信号機組で
夢主はテイルズオブシンフォニアの世界からトリップしてきた寡黙少女。
信号機組に大技をせがまれて仕方なくインディグネイト・ジャッジメントを見せてやったらとんでもない事が
でした!

実はシンフォニアをプレイしていない天音は知っている限りのにわかシンフォニア知識で書かせていただきました;
差支えない程ではあると思いますが、どこか変であったらすいません><;

リクエストありがとうございました!
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