子供並にバカな私は、好きな人へのアプローチなんて考えたことが無くて。 その人の視界に入ろうと必死になって王宮の文官になってあの人の元に付いた後何をしようなんて考えたこともなかった。 ない頭を振り絞って出た答えは街を走り回る子供のように安易で単純なものだった。
「お名前!またここの書類誤字がありますよ!」 『え!?ごめんなさいジャーファルさん!すぐ直します!』
仕事できないふりして手を焼いてもらおうだなんて。 っていうのは嘘で。 正確にはあの人の部下になったことに舞い上がり過ぎてペンを持つ手すら震えてしまってまともに仕事ができた試しがない。
あぁもう。文官になるまで頑張った頭脳はどこに行ったのだろう。 あまりにも酷い時は与えられた休憩時間フルに使ってまで書類の修正。 そしてこっそりジャーファルさんの机の上の書類も消化したりして。
「それ直したら休憩してきていいですよ」 『わかりました!』
「早めにお願いします。私は一度席を外しますね」 『はい!』
とはいっても、会話という会話をした試しは少ない。 せめて世間話の1つにでも繋げられるような私の言葉のボキャブラリーがあればいいが生憎私はボキャ貧だ。 なぜこんなに自分の頭の引き出しは容量が少ないのだろう。 目の前の書類を収める引き出しは見たくない程あるというのに。
ジャーファルさんのいなくなった部屋で先程指摘された誤字を直して、ジャーファルさんの机にそれを提出してから私は休憩に入ることにした。
気分転換でもと思ったけれど結局この時間も頭の中では何かを考え脳内はフルに活動しようとする。 こんなところは訳が分からないぐらい真面目なんだから、とため息をついて。 とりあえず私は王宮を散歩することにした。
『んー。今日はすぐに終わってよかったー』
独り言を言うには絶好の誰もいない廊下。 幸い今日の修正個所は少なく、珍しくシンドバッド王も仕事をしているらしい。 いつもより小さい山のジャーファルさんのお仕事をこっそり手伝うことはしなかった。
好きな人の為に時間を使えているとは言え少ない休憩時間が削られるのも惜しい話だもんね。
「何は終わったんです?」 『そりゃあ修正とお手伝いが……って、あ、え…ジャーファルさん!』
「どもり過ぎです。休憩ですか?」 『勿論息抜き中です』 「そうですか」
『……って!ジャーファルさん滅茶苦茶荷物持ってるじゃないですか…!』
だから私は気付くのが遅い! ジャーファルさんの腕に積まれている書類やら地図やら、とにかく上に積まれているものを思わずふんだくった。
『手伝います!』 「でもお名前、休憩中でしょう?別にここまでは持てた訳ですし、構いませんよ」
『いいんです!私がやりたいだけですから』
ただ貴方の役に立てるならそれでいいんです。
この言葉が声に出せればどれだけいことか。 言う言葉も行った行為もジャーファルさんの耳に入らなければ、ジャーファルさんの目に入らなければ意味はないというのに。
「ありがとうございます」 『いえ!ただの荷物持ちですけど…』
「それだけではありませんよ」 『え?』 「いつもこっそり私の書類をやってくれているでしょう。気付いていないとでも思いましたか?」 「え!?」
クスクス笑うジャーファルさんに私は思わず振り返って赤面してしまった。
う、嘘。 だって私みたいなその辺にいるただの文官でしかも足引っ張ってばっかのどうしようもない奴なのに。
「知っているつもりですよ。お名前のことなら」
一部下として、でなく私のことだ、というジャーファルさんの言葉に少し胸が高鳴る。 あぁやめてくださいよジャーファルさん。ちょっと期待しちゃうじゃないですか。
「それとも、気付かれたらもうやってはくれませんか?」 『や、やりますよ!手伝います!書類でも荷物運びでも何でも!』 「それは心強い。でもまたミスして仕事は増やさないでくださいね」 『ジャーファルさんの分は絶対間違えません』 「自分の分も間違えないでください」
存在がばれてもばれなくても、私はジャーファルさんの為に死力を尽くします! 失敗だってするかもしれない。 でも、ちょっとでもいいんで
いつか私に少しでも振り向いてください。
1cm単位の思いを
(気付いていないとでも思っているんですか) (貴方が私のことを好きだって事ぐらい)
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333333キリリクのジャーファル夢でした シチュエーションのご指定がなかったのでこちらで書かせていただきましたが捧げます! リクエストありがとうございました(´ω`*) _
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