休日に体の疲れを取ろうとするのはごく当たり前なことだろう。
ただ、その疲れを取ると言う行為に人と違いがあると言うだけ。
1日中布団を恋人にしてベッドから離れないのも、逆に落ち着かないから仕事を熟すのもその人次第。
(まぁシンドリアの王宮において休みにまで仕事をするのはジャーファルぐらいだ)


『いいねぇ休み!机に向かわないのサイコー!』


お名前はその休日の過ごし方の中でも1日をベッドで浪費するような生活はしない。
そんなの勿体ないという本人の性格もあるがなにより休みたいとは言え部屋でじっとしているのは性に合わないのだ。

シンドリアの王宮を囲む緑の木々の中にお名前はいた。
マイナスイオンを体で感じようというのか。
とは言ってもお名前がそこまで考えているとも思えないので、きっとなんとなく来てしまったというレベルのものだ。
野生の勘と言うか、自然と体は安らげるところに自分を運ぼうとしたらしい。

思いっきり伸びをして息を吸い込み、芝の生える地面に台の字で倒れ込もうとした地に腰を下ろした時、その傍で小さな鳴き声が数多く聞こえてきた。


『…お?』


鳴き声の元を辿れば、大きな木の幹の傍に小さなリス達が沢山群がっているのが見えた。
そして倒れこもうとしていた先には巣穴とも思しき穴が見える。
巣穴を守るためか、道理で鳴き声が聞こえる筈だ。

微笑ましい光景においで、と手を伸ばしてみればちゅっと小さな鳴き声を上げてお名前の腕を伝ってくるリス。
肩まで登って来た茶色いふわふわな生き物の頭を撫でてやれば大人しくリスは頭を撫でられている。


『可愛いなぁ…』
「?」

『うんうん。今日一番の癒しだわ…何か食べ物でも持ってきたらよかった』


手持ちに何もない自分を少しだけ呪えば訳の分からないというように首を傾げたリスにお名前はごめんねと通じもしない言語で語りかけた。
逆の腕にも上って来た違うリスにお名前の頬は思わず緩む。


「…何をしてるんだお前は」
『可愛い小動物ちゃんと戯れてる』
「それはわかる」

『で、あんたは何しに来たのマスルール』
「昼寝」
『あっそ。……ってなにこ…れぇっ!?』


どこからともなく現れた巨体に、お名前が驚くことはなかった。
赤毛が風に揺れ見かけに反した軽い動きでお名前の隣に立ったマスルール。

武骨で大きな手からスッと何かを差し出された、と思いその手を覗き込もうと顔を寄せれば思いっきり口に何かを突っ込まれた。
突然突っ込まれた遺物に変に声が裏返ったものの次に口の中に広がったのは優しい甘味で。
噛み砕けば粉っぽく、程なくしてそれがクッキーであるということに気付いたお名前はよく味わってクッキーを噛み砕く。


『なんでクッキー?つかいきなり口に突っ込むんじゃない』
「持って行けって言われたから持ってきただけだ」
『…ヤム?』


こくりと頷いたマスルールが、1つまた持ってきたクッキーをお名前の肩に乗っていたリスに差し出した。
するとリスは嬉々としてマスルールの手から香ばしい香りを放つクッキーを受け取りカリカリと音を立て出す。


『あ、ずるい!私に預かって来たならよこしなさいってのっ!?』
「ん」

『……口に寄越せって言ってるんじゃない』
「ん」
『あ、だから私があげるって…!』


次々にリスにクッキーが渡されていく中でまた1枚お名前の口にクッキーが挿入され言葉が遮られるが生憎美味しいのだから文句が言えない。
正確にはマスルールに文句はあるもののクッキーには罪はないのだ。

ここまで来ていい加減捻くれるのを止めたのか、マスルールが普通にお名前にクッキーの入った袋を手渡した。

晴天の休日。
木々に囲まれたで動物たちと戯れる姿を知る者は誰もいなかった。

そんなある日の出来事。






休日の過ごし方

(で、何でここってわかったの?)
(匂い)
(…うっわロマンも何もない)




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皐月さんリクエスト
主人公が動物と触れあってるところにマスルールが主人公を可愛がる話
主人公もなんだかんだ文句言いつつ満更でもない感じ
でした!

可愛がっている…のか…?
という疑問はぶつけないでください天音が一番わかってます←
動物ってことでやっぱりパパゴラスにしようかと思ったんですがすいません小動物がよかったですという天音の願望
リクエストありがとうございました!

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