まだ朝も早い今。 あまり騒がしくしては迷惑だと思い廊下をできるだけ音もなく歩く。
前までのお名前なら迷わず向かうのは主である姫の元へ向かうのだが、お名前が向かう先はそうではなかった。 少し足取りが軽いのは気のせいではないだろう。 そんないつもとは違う足取りに気付かない程自分も鈍感ではない。
目指すは随分前に自分と共に道を歩むと決めたパートナーの元。
『青舜?入るよ』
足取りが止まった前にある扉をノックして、返事を待たぬまま扉を開ける。 青舜、ともう一度愛する彼の名前を呼ぶも残念ながらその返事はなかなか帰って来なかった。
『ほら!起きて起きて』
「…お名前…?」 『ほーら!』 「……おはようございます」 『はい、おはよ』
まだ軽く布団に包まっていた青舜の体を揺さぶれば少しまだ眠そうな声。 やっと挨拶に返事が返って来たかと思えばあちらこちらへと弧を描く寝癖が見える。
スッキリ起きれる時と起きれない時の差と言うのはなかなか大きいものではないか。 青舜もこうスッキリ起きれない時と起きれない時との差が激しい人間の1人だ。 今日からは西の国へ遠征に行く予定であり、起きれなかったら困るからとお名前にこうして遣いを頼んでいたのだった。
しかし一度目が冷めれば青舜はいつも通りの青舜であり眠たそうな表情も消える。
「まだ時間はありそうですね」 『うん。早めに起こしに来ちゃったから』
「ありがとうございます」 『うん、っわ』
まだ着替えは終わっていない青舜に手を引かれ腕の中に閉じ込められた。 武人にしては細い腕なのに自分より遥かに逞しい腕に胸がどきりと高鳴る。
『ちょ、青舜。早く白瑛様起こしに行かないと…』
「まだ時間はあるんでしょう?いいじゃないですか」
青舜の部屋で誰も見ていないとはいえ羞恥からか腕を離して欲しかった、が青舜はそのつもりはないらしい。 楽しそうに言う青舜にお名前は押し黙り静かに時が過ぎる。
この心地いい時間を青舜はずっと堪能していたかったがそういう訳にも行かないのが現実。
『青舜、そろそろ行かないと』 「そうですね」 『じゃあ、』
「お名前が私に好きですって言ってくれたら離します」
『え』
そんなの聞いてない、と言わんばかりに青舜の腕の中でお名前が目を見開く。 だが青舜は酷く悪戯な笑みを浮かべているから質が悪い。
これはわかっていてやっている顔だ。
だからこそお名前は何か言ってやりたかったがこの笑みを浮かべる青舜には何を言っても無駄なことも知っている。 ならばどう妥協するか、それを学習しない程お名前はバカではなかった。 余裕そうに笑う青舜の耳元に顔を近付けて、お名前は彼が望む言葉を囁くのだった。
残念ながら、彼女が一枚上手です
(愛してる)
(……!?) (ふふ、青舜顔真っ赤)
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藤さんリクエスト 咲き花連載終了後の新婚さんで青舜が夢主をやたら甘やかそうとしたり、青舜がSに目覚めたり? な、甘ほの甘
でした! 今まで甘えられなかった分夢主に沢山甘えさせて欲しいとのことで最後に最大のデレ場を用意してみました そして天音は朝が弱いです 起きれたり起きれなかったりします。青舜のそのあたりは捏造です 青舜くんはちゃんとしてそうですが仕様ってことで←←
リクエストありがとうございました _
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