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『何してんの紅玉』
「え?だってシンドリアの方々がいらっしゃるのでしょう?正装でお迎えしなければ失礼ですもの」
「ねー」
『何でいんの紅覇』
同じ女同士、紅玉までは許そう。
しかしなぜこの男の娘とも言おう紅覇が私の部屋にいるのか。
「なんでって…この僕が一緒にアスタルテの服装を考えてあげるっていうんだよ?」
『頼んでも望んでもないんだけど』
「いいじゃない!あ、この着物はどうかしら?」
「えーこっちの方がよくない?」
「それよりかアスタルテには薄手の色の方が…」
『人の話無視か』
はぁ、とため息をついても目の前の2人はわいわいとあれでもないこれでもないと着物を広げている。
そんなの私の柄じゃないし、私は着飾って綺麗になる人だけそういう事をすればいいと思ってる。
特に私はそんなことを望んでいる訳じゃないし、したいとも思わない。
紅玉はもとからそういう事が好きだし元が可愛いから(お世辞じゃない)そういう事をするのにふさわしいと思った。
紅覇はそういうことを誰かにさせて楽しむ方だろう。
別にそれが悪い事とは言わないけど興味のない私を巻き込まないでほしいと言うのが本音。
「アスタルテ!これを着てみてちょうだい!」
『やだ』
ごめん紅玉。
見事なまでに即答した私に紅玉が頬を膨らませる。
そんな仕草も可愛いなぁなんて的の外れたことを考えていたら楽しそうに笑みを浮かべる紅覇が紅玉の手から淡い赤色の着物を奪い取って一言。
「じゃあ僕が脱がせてあげようか?」
笑顔で言う紅覇の言葉が冗談に聞こえないのはこの言葉が冗談じゃないからだろう。
ぞくりと一瞬背中に寒気が駆け抜けたために、私は思わず紅覇の手から着物をふんだくる。
そんなことされるぐらいなら自分で着た方がましだ。
特に恥じらいもないまま帯の紐を外していれば紅玉が紅覇を外に追いやった。
脱がされるのが嫌なだけで自分で脱ぐことはそこまで気にしない。
「もうアスタルテ!もう少し恥じらいを持ちなさい!」
『だって見られて減るもんじゃないし』
「そういう問題じゃなくってよ!」
なぜか私なんかより顔を赤くした紅玉に怒られた。
うん。そうやって恥らった方が女としては可愛いんだろうね。
「でもなんでおヘソは隠すのかしら」
『…なんか反射的に』
「どういうことよ。その癖に上は隠さないなんて…」
『自分でもわかんない』
紅覇に脱がされて嫌なことはそう、これ。お臍を他人に見せるのがなぜか猛烈に嫌だったから。
紅玉にも言ったけどこれは軽く反射的にお臍を隠している。
なんでかは自分でもわからない。
でも記憶をなくしても染みついてる条件反射とは一体どういうことか。
「もう入るよー?」
『…紅覇。返事もしてないのに開けない』
「いいじゃん。もう着てたんだから」
悪びれた様子のない紅覇を一発ぐらい殴っても許されると思う。
私には王族がどうとかは興味のない事。
それが無礼だのなんだの言われる筋合いはない。
(むしろ女の部屋に確認もして入らない方が無礼だ)
滅多に着飾らない私の着物姿に紅覇はつま先から頭の天辺までを見つめている。
「馬子にも衣装だねぇ」
『紅覇それ実は失礼な言葉って知ってる?』
「それぐらい知ってるよ?バカにしてるの?」
『それはこっちのセリフなんだけど』
「大丈夫。アスタルテは元から可愛いわ!」
『……素で言われても照れるからやめて欲しいかも』
そして私の着物姿についてまたああでもないこうでもないと言い出す2人の姿を見て私はげんなりするのだった。
シンドリアの使者が訪れるまであと数日。
来るであろう使者の者たちを私がどう迎えるのか、私にもわからない。
桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿
(アスタルテ次はこれねー)
(髪はどうしましょう!)
(…楽しそうだね2人共)
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紅覇くんと紅玉ちゃんの絡みってなんなんだろうか…(しろめ)
でも紅覇くんは他人にこうしてちょっかいかけるのは好きそうですよね
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