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『……白瑛、一応聞くけどこれは何を作ったつもりだったのかな…?』
「え?麻婆豆腐ですけど…」
違う。これ麻婆豆腐違う。
アスタルテは目の前で黒い煙を上げる白瑛の自称、麻婆豆腐を見つめうっと鼻を押さえた。
なぜ普通の材料で普通に料理をしてこのような兵器を作れるのか。
しかし白瑛にその自覚はないらしく美しい顔を傾げてアスタルテを見つめている。
「今日のはちょっと辛さを重視してみたんです」
『いやいやいやこれ全く違う辛さで舌がやられちゃうと思うよ』
「是非アスタルテにと」
『まじで』
確かにアスタルテは甘いものも辛いものも好きであり広い幅の味を好んでいる。
昼前に突然白瑛に呼ばれたと思ったら目の前に差し出されたのは何やら黒煙を巻き上げる謎の物体。
この味が甘いのか辛いのか(白瑛的には辛いらしい)見かけでは全く予測ができない。
自分にと作ったらしいものを無下にするわけにも行かない、アスタルテは顔を青ざめさせながら白瑛を見やればにこにこと笑っている。
この笑顔には全く邪気を感じられず逆に何も言う事はできないのが憎い。
『えーっと……』
「さぁ、召し上がってください」
―白瑛、性格悪い…!
これがジュダルやら紅覇であればそのまま突き返すか皿ごと顔面にプレゼントしていたところなのだが。
『は、白瑛。どうせなら青舜と白龍も呼ばない?』
「2人を?私は構いませんが…」
『ちょっと私呼んでくるね!』
よしこれで共倒れ仲間を増やそう。
こんな時だけは自分の中にある危機察知能力が働いたのか2人をすぐに見つけることができた。
若干青ざめた様子で声をかけたアスタルテに頭に疑問符を浮かべる2人を何も言わずに連行。
白瑛の待ち構える部屋の扉に立った時、白龍は何かを察したのかそこで初めて腕をつかんでいたアスタルテの腕に抵抗を見せる。
「離してくださいアスタルテ殿…!」
『やだ』
「?」
『青舜は着いてくるよね?』
「とりあえずは行きますが……」
『ほら、諦めな白龍』
「……!」
気付け青舜と目線で語りかけたが、青舜はその意図に気付いてはくれなかったらしい。
『白瑛ただいまー』
「あら、早かったですね」
扉を開ければ冷めないように温めておきましたよとぐつぐつ鍋を煮る白瑛の姿。
そこで全てを察したのか青舜までもがアスタルテの腕に抵抗を見せ始めた。
しかしあくまでも笑顔のままアスタルテはその手を離すまいと躍起になっている。
『それでさー白瑛、ちょっと悪いんだけど紅炎に呼び出しくらっちゃってさ』
「「!?」」
「あら?そうなんですか?」
『だから2人に食べさせてあげてよ。料理は今度一緒に作ろ』
「ちょっ…」
『じゃ、白瑛あとよろしくー』
突然この人は何を言い出すんだと生贄にされる予定の2人がバッとアスタルテを見やる。
勿論紅炎になど何も言われていない。
この場をやり過ごすためだけのものだと理解した2人はちょっと、と声をかけようとするよりも先に今まで強く掴んでいた手をするりと手をすり抜けて行った。
この時のアスタルテの笑顔はびっくりするほど清々しいものだったとかそうでなかったとか。
先んずれば人を制す
(では青舜、白龍)
(姉上…!)
(姫様…!)
(いただきましょうか?)
(あっぶなー…とりあえず紅炎のとこ行こ)
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