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『さぁ、種明かしをしようか』
あぁ、滑稽なことだ。
『そう。もうお気付きの通り
この通り魔連続殺人、首謀者は私
そしてこれもわかってると思うけど私以外に、女性2人を殺したもう1人の犯人がいる
私の存在に勘付いたんだろうね
男たちが関係の無い女性を殺し出した時は頭に血が上って思わずすぐに殺しに行った
覚えてない?大体私、あの殺人の次の日は寝不足だったんだけど
それと』
もしも兄様がジャーファルさん並に真面目な人だったら、今頃私はお縄に付いていたかもしれない。
でも、私は兄様がバカなのを知っている。
どこまでも、バカ。
私に似て とっても、とってもバカなんだから。
『兄様、忘れたとは言わないよね』
今目の前に映っている私はどんな姿なのだろう。
『あの15年前の事件』
忘れられてたまるか。
忘れられるわけ、ないというのに。
こうやって聞いてしまう私は性格の悪い女。
この15年でどれだけ私が汚く育ってきたのか。
うん、そんなの兄様が知ってるわけないよね。
強い風が私の服を大きく煽った。
私はそれを分かっていながらも、兄様に背中を向ける。
忘れるわけないでしょう?
"あちら"に立っている皆の眼には服なんかでは隠れきれない大きな背中の傷が、まざまざと目に映っていることだろう。
振り返ればやはり、沢山の見開いた瞳が私を映していた。
その瞳に映る自分が見えたらいいのに、距離が遠すぎてそれが見えることはないのだけれど。
「15年前の…って、まさか」
見えなくて、良かったかもしれない。
『私たちの両親が母様と父様が殺された日の事を』
「「「「!!」」」」
ここまで言って、どこまで話は繋がっただろう。
でももうなんとなく気が付いているんじゃないか。
そろそろ顔を上げるのが辛くなってきた。
やだなぁ。決めてたのに。
悪役は1人でいいんだって。
私1人が汚れ役を背負えればそれでよかったって言うのに。
「シャルルカン…貴方は気付いていないかもしれませんが、アスタルテが殺した男性全員は、貴方方の両親を殺した賊の残党だったんですよ」
「なんで……ジャーファルさんは、それを」
「調べて行きついた結果、アスタルテが教えてくれました」
「なんで…嘘だろ…意味わかんねぇ………」
『……わからなくていい』
腕に力を入れるのが困難になってくる。
頭が、完全に冷静になりきれてない証拠。
握った槍から滴る血は全て雨で流れてしまった。
―分かるわけない。
『なんで、私が槍を使ったかわかる?』
「…お前の武器だから、じゃないのか?」
『………さすが、マスルールもバカ。そんな単純なわけないでしょ』
だから、その武器にした理由がわかるかと聞いているのに
『私……兄様が大好きだった』
「!」
『小さいころから剣を振るって、ずっと私の手を引っ張って行ってくれてた兄様が』
「…過去形、なのね」
『残念ながら』
ごめんねヤム。
私、嘘もホントも上手く伝えられないから。
だから言葉をひたすらに並べるよ。
『あの事件が、兄様が私を捨てるまでは』
形影相憐
(血の繋がりなんて)
(断ち切れてしまえばいいのに)
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