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そろそろ机に向かっているだけでも暇だなーと思えてきた昼下がりの事。
机にうなだれ始めたアスタルテに、シンドバッドがふと思い出した様にアスタルテの名を呼んだ。
『なんですか。お酒でもくれるんですか』
「そういえば、スパルトスが帰ってきているぞ」
『!』
「今はジャーファルの所辺りにあるだろう」
『行ってきまーす!!』
ガバッと顔を上げ、居場所さえわかればこっちのもの。
あの行動力はどこから湧いて来るのか。
もちろん同じ槍使いの武人としてのこともあるだろう。
しかし
「…スパルトスが心配だな」
どちらかといえば、悪戯心の方が強い気がしなくもない。
『スパルトスー!!』
長い廊下を息一つ乱さず疾走し、目当ての彼がいるであろう部屋をノックもせずにけたたましい音を立てて開いた。
アスタルテに任務帰りで疲れているのではないかという考えなど全く無く、とにかくスパルトスに会いたい気持ちでいっぱいだった。
「アスタルテ…っ!」
『久しぶりー!元気してた!?手合わせしよう!』
「ま、待て!それ以上執拗に近付くな!」
『えーなんでなんで』
「わかっているだろう…!」
『まぁねー』
わかってるからやめられない。
…このスパルトス虐めは。
近付けば年頃の女性が、と謙遜するスパルトスをアスタルテが標的にしない筈がなく。
最初はただ単に同じ槍使いという興味だけだったのが、今では天秤にかければ悪戯心と興味と、どちらが勝ることやら。
『まぁまぁ茶番はそこまでにして、疲れてなかったら手合わせしない?』
「……疲れは言う程ではない。ただ…」
『男女差別はんたーい。疲れてないならさっさと中庭!』
言おうとしたことに先に釘を刺し、早々にアスタルテはスパルトスに背中を向けた。
その背中の露出にスパルトスは目を背けるのだがなぜそんな所はシャルルカンに似てしまったのか。
しかし一度槍を交えれば男女などとは言ってはいられない。
いくら八人将とは言えアスタルテの実力には油断できないものがある。
待ったをかける前に去ってしまったアスタルテにスパルトスの伸ばした手は 虚しく宙を切った。
「お?何してんだスパルトス」
「シャルルカンか…」
開け放たれたままになったドアを覗き込んだのは偶然にもそこを通りかかったシャルルカン。
アスタルテとは逆の方向からやってきた彼はアスタルテとはすれ違わなかったらしい。
状況が理解できず唖然と立ち尽くすスパルトスにシャルルカンはずかずかと部屋に進入していった。
「ってかさ、お前今日帰ってきたんだろ?どうよ一杯」
「……やはりお前たちはそっくりだな」
「は?」
「生憎たった今先約が入ったところだ。お前の妹からのな」
「…はぁ!?」
失礼する、と壁に立てかけた槍を手にとったスパルトスが見たのは呆気にとられたシャルルカンだった。
シャルルカンから逃げる口実にアスタルテを使ったことに少し罪悪感を感じたが、まぁ手合わせをすつことでおあいことさせてもらおうではないか。
一族郎党
(あ、来た来た遅かったね)
(お陰様でな)
(…?)
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