『"通り魔"ぁ?』
「はい。最近巷を流行らせているらしいですね」


業務執行中、ジャーファルから出た単語にアスタルテが反応する。

しかし筆の動くスピードは2人とも落ちない。
さすがと言うか、慣れた手つきで話をしながら手が動いていく。


『なに、行商船でも襲われましたか』
「いいえ。下町で人が襲われたそうです」

『…それはまた…』


胸糞悪い話、とアスタルテはまた1つ書類を書き上げた。
紙をジャーファルに受け渡し次の書面に向かい合う。


『襲われたのは男ですか女ですか』
「現段階では男性5人、女性はいません」

『…なんだ、女だったら私が囮にでもなろうと思ったのに』
「…あまり軽率に話は進めないでください。いくら貴方でも油断したら命を落としかねませんよ」
『はーい』


まるで母親の様だとアスタルテは思いながらジャーファルを見やった。

しばらく続いた沈黙。
ゆえに聞こえてきた足音。
誰だろう、と思いながらアスタルテとジャーファルは扉を見据える。
ノックも無しに入って来たその人物に、アスタルテは眉間にシワを寄せジャーファルはあ、と声を上げた。


「…いたのか」
『いちゃ悪い?』
「悪い」
『はぁ!?』

「はいはい落ち着いてください」


予想通り、牙を剥いて立ち上がったアスタルテの首根っこをいち早く掴み、ジャーファルは動きを制した。
マスルールはそれを嘲笑わんと鼻で笑えば更にアスタルテの頭に血が上る。


『ったく…あ、つかコイツ使って匂いでも辿れば?』
「海で途切れた」
『…役たたず』

「だからお互い挑発しない」


首から手を離したジャーファルが2人の頭に拳を落とした。
言うほど痛いとも思えない上に2人に反省する気もないのだが形式上怒っておかねばならないだろう。
それなりの抑制力を持ったジャーファルの静止にとりあえず討論を停止。
しかしアスタルテの視線は一方的にマスルールを睨みつけている。

まるで大きな子供を持った気分だ。
しかしどちらが姉または兄だろうか。まぁアスタルテはシャルルカンの妹なのだが。

そして再び招かざる客人たちが。


『あ、モルジアナいい所に!いけ!こんな奴やってしまえ!』
「え…アスタルテさん?」
「なんだいおねえさんまた喧嘩かい?」
「こいつに関わらないほうがいいぞ」
『なんだとマスルール!』
「まぁまぁアスタルテさん落ち着いて!」
「アリババくんでも止めても無駄だよ」

「………」


しかしこの混乱した現状。
ジャーファルは思わず頭を抱えてしまう。

なぜ大の大人がこうもキャットファイトを始めてしまうのか(しかし一方的だが)
もう行っても無駄だろうとわかっていながらもジャーファルはとりあえずアスタルテの首根っこを掴み、マスルールとアスタルテの頭をもう一度どついたのだった。




無為自然

(だいたい貴方たちはもっと大人としての自覚を持って…)
(…なんで私があんたと並んで説教受けないとダメなの)
(お前のせいだろ)
(はぁ?)

(もう一回一から聞きたいですか…?)
((結構です))

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