ギシギシと軋む体。
チッと舌打ちをしてから目指すのは思っていた通りの湯浴みだ。
汗だって掻いた上に若干の気持ち悪さも残っている。
身体がベタ付いて気持ち悪いのもあるが、胸の内も気持ち悪いのにアスタルテは気付かないフリをして廊下を歩く。

湯浴みしたら槍も磨こう、と槍をコンパクトにし一旦部屋に戻った。


「あらアスタルテ。鍛錬…じゃないわね」
『また喧嘩吹っ掛けてきた』
「みたいね」


廊下にもう一度出ればヤムライハの姿が目に入って声を掛けられたが、括っていた髪をガシガシと解き手で汗を仰ぐ。
そんな姿に何があったかを一瞬で理解したヤムライハはため息。


「あんたも女なんだからもうちょっと小奇麗にしたらどうなのよ?」
『それヤムもじゃん』


どうせまた兄様に言われてるんでしょー、言ってみればヤムライハに青筋が浮かんだのが見えた。
図星かとアスタルテが笑えばうるさいわねと杖で頬を突かれた。
アスタルテは痛い痛いと棒読みで言ったが当たり前のように杖での追撃は続く。
ヤムライハも若干気にしているところがあったらしい。
まぁ、それを本人が気にしていてどうにかするかは別として。

そろそろ頬が痛くなってきた頃、アスタルテがそうだと声を上げて杖を手で避けた。


『ねぇヤム湯浴み行かない?』
「?別にいいけど」

『おっしゃー』


まだ言うほど日は傾いていないのだがアスタルテはどの道湯浴みに行くつもりであった。
そこにヤムライハも引き連れて湯浴み。
それにしても多いに越したことはない。

行き道にピスティとモルジアナを見つけたのでついでに誘って女組全員揃って湯浴みに行った。




















「ヤムもアスタルテも相変わらずおっきいねー」
『「は?」』


全裸になった4人で湯浴みに行ったはいいもののピスティが見ているのは明らかにアソコであった。
モルジアナは頭に疑問符を浮かべているが、勝手にピスティに私達はいいもんね!と手を取り合っている。


『だからデカくたってなんもないでしょうに』
「ねぇ」

「これだからダイナマイトボディたちは!」
「…何がですか?」
『あーはいはいモルジアナは知らなくていいよ』


アスタルテはモルジアナの頭を撫でてとりあえず湯につかる。
疲れた体には気持ちいい熱い湯。
全身を洗い流す目的で来たのだが思わず長い息が漏れた。

最初に体流しなさいよ、とヤムライハに怒られたがピスティもアスタルテと一緒に湯船に浸かってしまっている。
モルジアナはしっかりヤムライハに教育されているようだ。
しっかりと最初に体を流していた。


『あーきっもちぃいー』
「ねー」

「まったくアンタたち…」
『モルジアナはこうなっちゃ駄目だよ』
「自分で言わないの」


体を洗った2人が湯船に浸かる。
髪を湯船に付けないようアップにした髪を一度解き、入れ違いにピスティとアスタルテが体を洗いに湯船を上がった。



「…?」



白い蒸気がモヤをかけてしまったが、モルジアナには見えた。
湯船から上がったアスタルテの背中に大きな傷跡、明らかに最近ついた傷ではない。
それに2人が何も言わないという事は2人は既にその話を知っているか、聞いてはいけないことなのだろう。



『ちょっとピスティそっちの石鹸とってよ』
「はいよー!」

『あ、こら投げるな!』

「ちょっとここで遊ばないでよ!モルジアナが真似したらどうするのよ!」
「それは大丈夫です…真似はしません」
『あれそれはそれで酷くない!?』



騒ぐアスタルテはいつも通りで。
そしてモルジアナは、いやモルジアナだけではない。

多くの者は後に知るのだ、あの背中に付いた大きな傷の意味を。







剛毅木訥

(何気モルジアナって髪乾きにくいのなー)
(…そうですか?)

(ヤムはちゃんと髪乾かしなよー)
(面倒じゃない)
(またそういうこと言って!ほらアスタルテも!)

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