※拙宅の「臆病者の恋物語」夢主の神北梨桜お相手の友情夢
特殊なので一応注意です






















サッカーは凄く好き。
でもフィールドには足がすくんで立てなくなる、臆病な自分。


「苗字ーこっちにもタオルー」
『あ、うん!』


マネージャー業務は楽しい。
優しい皆に囲まれて大好きなサッカーに関わってられるから。
フィールドに立っていたあの日の自分にはおさらばしてしまったの。

体に刻み込まれた苦い記憶。
私がフィールドに立てなくなってしまった怪我はそのフィールドでできたものだ。


「名前さん、座ってた方がいいんじゃないですか?」
『ありがとう葵ちゃん。でも大丈夫!今日は調子がいいの』
「ならいいんですけど…辛くなったらベンチ座ってくださいね」
『うん』


新しく入ったマネージャー、葵ちゃんもとってもいい子。
選手だけでなく私まで気遣って周りの心配が出来るサポート向きの子だと思う。
休憩中、雑談を挟みながら業務をこなしていると


「あれ神北じゃね?」

『え?』


倉間くんの言葉にベンチから後ろを振り返った。
振り返った先には倉間くんの言った通り、同じクラスの神北梨桜さん。
青い髪、青い瞳、そしてサッカーが嫌いだという自己紹介が印象的だった。

正直、元から愛想がいいとは言えない表情が現在更に厳しい。

なぜか神北さんは嫌いというのにサッカー部の練習をよく見に来る。
もしかしてサッカーが好きなんじゃないかとすら思うけどそんなこと言ったら視線で殺されてしまいそうな勢いだから言わないけど。

でも今、神北さんの視線は確実に私に向いていた。
私なにかしたかと思い当たることを探すけど生憎神北さんを怒らせるような事件は記憶の中に見当たらない。
私と神北さんの視線が交わると、神北さんはツカツカと階段を下りてきて


「神童、少し苗字を借りるぞ」
『え?!あ…?』


神童くんの返事を聞くまでもなく私をもの凄い勢いで引っ張って行った。
実は私は正式なマネージャーしゃないからわざわざ聞かなくてもいいとは思ったんだけど。

どうやら神北さんは律儀な人らしい。
勢いよく連れていかれたのは放課後になって人気のなくなった中庭。
これは俗に言うリンチと言うヤツじゃ…いやでも神北さんがそんなことする人には…。



「単刀直入に言う。貴方はなんでフィールドに立たないの」

『え?』
「できるんでしょ、サッカー」

『………』


「私はサッカーが嫌い。でもサッカーに対して中途半端な気持ちでいる人はもっと嫌い」



ぐさり、心に言葉の棘が突き刺さる。
神北さんの言いたいことはわかる。でも、


「足の怪我が原因なんて言わせないから」
『!なんで…』

「見てればわかる。ただボールを触るだけなら大丈夫そうだけで明らかにスライディングとかに対する反応が違う」


まさか選手じゃない私の事までそこまで見てるとは思わなかった。
でも同時に、神北さんにすべてが見透かされている気がして恐ろしくもあった。
少し足がすくんで、一歩後ろに下がろうとしたら鋭い瞳で貫かれガシッと腕を掴まれる。


「逃げるな!!」
『!』




「自分の足で!」

「立って!」

「前を向いて!」

「サッカーと向き合え!」



私にがなり立てる神北さんは、どこか必死そうで泣きそうに見えた。
呆然とした私に、我に返った神北さんの手が離れる。その表情はいつものクールな顔。
でも、私にはなんとなく今の彼女が巣の神北さんだったのではないかとすら思えた。


「ごめん、余計なことを言った」

『……ううん。ありがとう神北さん』


本当の神北さんが、私に激励をくれた。
その事実だけで私には十分なのかもしれない。

本当の神北さんが臆病で前を向けない本当の私に。
いつの間にか足はすくまなくなっていた。


『ねぇ神北さん』
「…なに?」
『これからは梨桜ちゃんて呼んでいいかな?』

「…お好きにどうぞ」






こころがきみを探してる

(これからは前を向いて)

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