今日の私は機嫌が悪い。
大股で力強く地面に足を付けて歩く帰路。
いつもなら篤志と一緒に、しかも手を繋いで帰るけど隣には誰もいない。
なんでかって?理由は簡単、私が今機嫌が悪い現況がその篤志だから。
『…なによ篤志の奴』
イラッとして足元にあった小石を蹴り飛ばす。
篤志たちのように何かを蹴るのに長けてるわけでもない私が蹴った石は大きく右に逸れて溝に落ちた。
スカートだったのにめちゃくちゃ足を振りかぶってたとか言うのも気にしている余裕もない。
ただただイライラする。
女の子の告白されてる篤志の姿。
それも1度や2度じゃない。
何度もその光景は見ているし慣れてはいた…と思っていたが心身ともにそれなりのダメージは受けるらしい。
ダメージというか…悲しさよりも怒りを感じる私にこのストレスは耐え難いものだった。
篤志がモテるのは知ってたけど、それでもこれだけ告白されると私の存在意義ってなんなんだとすら思う。
彼女というポジションにいながら、それを周りに認知されながらこの有様。
素直に私に喧嘩を売っているなら買ってやればいいんだけど素直に篤志を慕う可愛い女の子だからこれが困る。
こんなこと思ってる私、実に可愛くない。
もう一つ。さっきよりも大きい石を思いっきり蹴り飛ばした。
いや、正確には蹴り飛ばそうとして空振った。…誰にも見られてないけど実に恥ずかしい。
「なーにイラついてんだよ」
『……!?』
「しかも空振りって」
誰もいないと思っていた背後をバッと振り向けばまさか、まさかの篤志到来。
気にしてなかった恥ずかしさと篤志に対するいろんな思いが訳わからなくなって顔に熱が集まってきた。
『なによ可愛い女の子に告白されてたくせに』
「…そんなんでスネてんのか?」
『アンタ本気の告白をそんなんって…告白した子いくら私でも可哀想に思うわ』
「名前に比べればそりゃどうでもいいからな」
呆れ顔の篤志が近付いてきて、思わず後ずさりしたけどすぐに腕を掴まれて距離を詰められた。
至近距離で見る篤志はやっぱりカッコよくて。
ムカつくけどやっぱり好きだって思った。
でも頭に過るのはあの告白のシーンで。
『…告白してきた可愛い女の子たちと帰ればいいじゃない。
篤志のこと本当に好きだって思ってる子達なんだから私と違ってずっと傍にいてくれるわよ』
口から零れるのは可愛くない言葉。
本当は自分だって好きだって思ってるくせに。
本当は自分だって篤志の傍にいたいと思ってるくせに。
言っといて泣きそうになった私。
篤志と顔を合わせることができなくて目をそらす。
俯いた私の頭上に降ってきたのは篤志のため息で。
なんだと思って顔を上げようとしたら目の前に広がったのは篤志の学ランだった。
「何かすんのも一緒に居んのもお前じゃなきゃ意味ねーんだよ」
抱きしめられているのに気付いたのは言葉の意味を理解してから。
篤志の体が離れていったと思ったら、いつものように手は繋がれていた。
そして自信満々に笑う篤志に私はまた何も言えなくなってしまう。
もう、それだけ言い切ってくれるなら何度でも私は拗ねてやろうとすら思ってしまうのだけど。
それは許してよねモテモテ篤志くん。
シュガーバイケース
(…にしても、お前スカートの中見えそうだったぞ)
(はっ…!)
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