『蘭丸…本当に行っちゃうの…?』
「止めるな名前…俺は行かなきゃらならいんだ…」
『でも…!』
「お前ら部室の前でドラマ始めるなよ」
事の発端は数刻前の部室内。
そう、部室内で出てはならない奴が……奴が出てしまったのだ。
黒い悪魔…とでも言おう奴が。
「たかがGブリが出たぐらいで」
『言わないで!その単語を口にしないで!』
呆れ顔で拓人が言ってしまったが名前は聞かなかったと言わんばかりに耳を塞ぐ。
だがしかしこの場において奴の姿を見たいともその名を聞きたいと思う者はいないだろう。
全員の手には殺虫スプレー・ハエ叩き・サッカーボール。
それぞれ個々の武器が握られている。
サッカーボールは武器じゃないという言葉は割合いただこう。
彼らにとっては武器だ。
「とにかく…駆除しないことには始まらないからな」
『着替えもできないし荷物も取りに行けないし…!』
「大丈夫だ…俺がお前を守ってやる」
「こんなところで使う台詞じゃないだろ」
『蘭丸…!』
「こんな時にときめくな!」
ゴッと倉間の痛くない程度の拳骨が名前の頭に直撃する。
だがそんなことに関わらず蘭丸と名前、2人の間に漂うピンク色の雰囲気が否めない。
何度やってもこの雰囲気には慣れない一同は怒りを露わにするか呆れるかの2択。
元からの性格が短期である倉間には耐え切れなかったようだ。
『こんな時だからときめくんでしょ!』
「ならさっさと駆除しにいけよ!」
「だから俺がこの戦場という名の部室に行ってやるって言ってるだろ」
『か…かっこいい…!』
「(…だめだこいつら)」
「よしなら行くぞ霧野」
倉間が完全に思考をシャットダウンした。
ついて行けん。率直な意見はそれである。
この中で唯一、蘭丸とよく接点のあった拓人だけがこの現状に順応している。
正直すげぇと思った人物は後輩である天馬たちだけではないだろう。
「まぁ焦るな神童」
「ミクロ単位で焦ってはいないが」
「俺はまだ名前に伝えてないことがある」
前後の会話だけは置いておいて、蘭丸の台詞と表情だけはドラマのようなワンシーンだ。
名前に歩を進めた蘭丸がキリッとした表情でこの言葉を放った。
「この戦いが終わったら付き合おう」
だがしかし、片手に持っているボールと殺虫剤のせいでそれは台無しになっていた。
そんなことも気にせず、恍惚とした表情で蘭丸と見つめ合う名前を見てそろそろGなんぞ気にせず帰りたくなった者が多発したとか。
フラグは乱立完了です
(うん…!)
(あーもう付き合ってらんねー)
(このフラグさっさと誰かへし折ってくれ)
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