マサキくんは"人当たりがいい人"になりきっている。
付き合って間もないけど私はそれをよく理解していた。
霧野くんから相談をされたこともあるし実際にその現場を目撃した時はどうしようかと思ったぐらいだ。

でもマサキくんは案外可愛い性格だということに気付いたのもこの時。
愛情表現が少し苦手な子なんだなって思った。
そのくせきっと誰かに嫌われるのは嫌なのだろう。
人当たりのいい人になって人との適度な距離を取っている。


『マサキくんはいい人になら誰にでもついて行っちゃいそう』
「はい?」


適度な距離を知っているからこそ、
その適度な距離が短ければ短いほどついて行ってしまいそうな感じ。


「俺そんなに軽くないっす」
『ホントに?』
「…俺が信じられないんですか先輩」
『うん』

「……」
『あぁごめんごめんヘコまないで』


そういう意味の信じてないってわけじゃなくて、ただ心配な気持ちの方が強い。


『だってマサキくんと霧野くんの事、話してくれなかったこと私気にしてるんだからね』
「……それは」


言ってやればちょっとばつが悪そうな顔をするマサキくん。
ほら、そういう所が心配だっていうのに。

霧野くんとは上手い事和解したみたいだけどそうはいかないときだってあるかもしれないし。
嫌だから霧野くんに突っかかったのか、そうじゃなかったのか、それはどうか私にはわからない。


『…はっ…もしかしてマサキくんって…そっちの気が…?』
「ありません!」


若干の呆れ顔で、でも思いっきり否定されてあははと笑う。
流石にそれは冗談だけど、ちょっとこの流れを続けてやろうかと思う。


『でも嫌よ嫌よも好きのうちって言うでしょ?』
「冗談やめてください」

『ホントに?』


我ながらバカらしくていじらしい質問だと思う。
それでも愛情表現が苦手なら無理にでもして欲しいもの。

ちょっとした催促。年上だってことを武器にしてマサキくんにそれを強制させるつもりはない。
ただ恋人としては愛情表現をしてくれたらいいなって思う。


『じゃあ霧野くんと私どっちが好き?』


当たり前に私とは言うのだろうけど。
それだけでもいいから言って欲しいなって思っちゃう私も大概愛に飢えているのかもしれないけど。

私の意地悪な質問にマサキくんは未だにばつの悪そうな表情。
でも、ちょっとしてから私の目の前にビシリと立てた付き差し指を私に向けてきた。




「俺が好きなのは先輩だけですよ」




私"だけ"だなんて、予想以上の返答に私はビックリして目を見開く。
そしてどうにも嬉しくなってちょっと赤くなったマサキくんの頬にキスをした。





無い物ねだりの世の中

(求めたものは)
(キミだけの愛)

_


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -