なんでか理由は分からないけど、最近私は可笑しい気がする。
自分では何とも思っていない筈なのにとある人を目にすると動悸が激しくなる。


「苗字!置いて行くぞ!」
『すいません兵頭先輩!今行きます!』


月山国光のサッカー部の皆さんはマネージャーを家の近くまで送り届けてくれる。
婦女子には優しく、がスローガンみたいなものらしい。
入部したての時はビックリしたけど慣れてしまえば結構心強い。
着替えが襲い私をわざわざ待ってもらうのは悪いけれど男と女の差はさすがにお許し願いたい。


「おせーぞ名前」
『す、すいません南沢先輩…!』

「南沢。婦女に暴言とはいただけぬぞ」
「うっせ」


ほらまた、怒られたくせに胸がぎゅっとして不思議な気持ちになる。


「気にするなよ苗字」
『あ…はい。大丈夫です』


むしろ違う意味で気にしているところ。
兵頭先輩が先に歩いて行った南沢先輩を追いかける。

私は同じクラスの月島くんと一文字くんと並んでそれを視線で追いかけた。


「なんなのだあの南沢の態度は」
『…一文字くん先輩に敬語使わないよね…』
「この部においてはな」
『…礼儀を重んじるんじゃなかったの』
「だから言っているだろう。この部においては、と」


一文字くんに並んで月島くんもなかなか辛口だと思う。
嫌いなの?と聞いてみたら嫌いではない、とのこと。
チームメイトとしてはそれならいいんだけどいくら転校してきたとは言え1年生が3年生に敬語を使わないとは。
若干ビックリしたけどまぁ、それならいいやと今は納得してしまっている。


「そういう名前は南沢に懐いているように感じるが」
『うーん……どうなんだろ』
「?どう、とは?」

『なんか南沢先輩見てるとなんだろ、こう、胸がむず痒い』


ピシ

『…?』


途端、なぜか2人の足が止まって私も思わず足を止める。
首を傾げていると前方に言っていた人たちも足が止まっていた。

何か変なこと言ったっけと振り返るよりも先に南沢先輩が私に近付いて来る。
また高鳴る動悸。
私は一体どうしてしまったんだろう。


「…お前さぁ……それ無意識なワケ?」
『はい?』


ニヤリと笑った南沢先輩の手が私の顎に添えられた。
整った綺麗な南沢先輩の顔。

冷静な判断が何もできないまま近付いてきた南沢さんとの距離が0になる。
距離が0。それが指すのは1つ。


『…え…?』


今、確実に南沢先輩のそれと重なっていた。
私の口から間抜けな声が漏れた時には既に南沢先輩の唇は離れていて。





「お前、俺に惚れてんだろ?」





言われて気付いた私はバカなのでしょうか。
南沢先輩の言葉と今までの自分の言動を振り返って自分の顔が真っ赤になっていくのを感じた。

もうこれからまともに南沢先輩の顔が見れる気がしません。






無垢と呼ばれた少女の結末

(南沢ぁぁぁぁぁぁあぁ!!!)
(あ)
(貴様帰り道堂々と男女不純異性交遊とは何事だ!)

_


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -