苗字名前、現在ピンチです。


「あの、南沢くん!来てくれてありがとう…」
「別に。で、話って何?」


この状況を見てしまった私はどうしたらいいのでしょうか。

南沢先輩に神童くんからの伝言を伝えに来た私。
三国先輩たちに話を聞けば南沢先輩は中庭に言ったっていうから追いかけてきたのに、まさかこんな現場に遭遇するハメになろうとは。


「南沢くんに彼女がいるのは知ってるの…それでも…!」
「…付き合うってのは無理だけど?」

「どうして!?」


どうしてって今あなた彼女いるって言ったじゃないですか。
実はあなた頭弱いんじゃないですか。

すぐにでも言ってやりたいが現在私の出る幕はない。
中庭の草むらに必死こいて隠れている私は傍から見ればさぞかし滑稽なことだろう。
でもそんなになりふり構っていられる状況でもないようで。

さっき彼女が言ったように、南沢先輩には彼女がいる。
そして私は一応、その南沢先輩の彼女である。

誰もが羨む南沢先輩の彼女というポジション。

自分でもなんで彼女になれたかわからないけど今現在、南沢先輩の彼女は私だ。


「彼女ってあの後輩の子でしょ!?私の方が綺麗で可愛い自信があるわ!」


人がいないと思ってボロクソ言うのは女の怖い所だと思う。
でも言い返すことができない。
確かにあの先輩は学校内でも有名な美人で、しかもどこかの部のマネージャーでとても器量がいいという話も聞いたことがある。
私と比べられたら、叶わないような存在。

でも、そんな馬鹿な自分でも嫉妬ぐらいはしちゃうもの。
例えありとあらゆるところが劣っていたとしても私の南沢先輩だもん。


「…で?」
「な…っ!この私の言葉を"で?"の一言で終わらせる気!?」
「…耳元で騒がれると煩いんだけど」
「信じられない…!」


そう、南沢先輩はあんまり騒がれるのが好きじゃない。

何回か怒られたこともあったけど、今では絶対にそんな失態犯さない。
私は勿論そんなこと知ってるから。
あの人は知らなくて私は知っていることがある。

そんなちょっとした優越感に心にゆとりを作るけど、やっぱり不安になる。


「俺はアイツ以外好きにならねぇよ」
「この私よりあの地味平凡な子を選ぶっていうの!?」

「あぁそうだけど?」
『え』


悠々と言った先輩の声が、予想以上に近くに聞こえて驚いた。
顔を上げた瞬間に腕を引っ張られて流れるように頬にキスをされた。
いつからバレてたのかとかあの人はいいのか巡る思考は止まることを知らなったけどこれだけは分かる。





「お前が居れば他の奴らはいらねぇよ」




私は南沢先輩の彼女です。

泣きそうになるのを抑えながら私はマドンナ的先輩ににやりと笑ってやった。
先輩の笑いが移ったのかもね、だって私は南沢先輩の彼女なんだから!






愛の呪縛さえ愛して

(どうせ嫉妬でもしてたんだろ?)
(…悪いですか)
(いーや?)

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