旅の途中に寄る町は砂漠のオアシスのようなものだ。
衣食住はさることながら煌びやかな町には人を引き付ける力があると言っても過言ではない。

アラジンとモルジアナが旅で空いた腹を満たしに行っている間にアリババと名前は食糧調達に行くことにした。


『久々の町だね』
「そうだな〜まぁ食料も間に合ってっからいいけどよ」
『…あの2人がね』


見かけによらずよく食べるあの2人を想像して少し苦笑い。
大体食料の過半数を占める自分より年下の2人をは本当に見かけによらないと思う。

地域によって特産物の違う町を回るのは面白いことで食糧調達も実はなかなか楽しい。
町の中でもできるだけ質のいいものを探したり、安くしようと競ってみたり。
そんなことがまた娯楽の一つなわけだが街中はやはり目移りしてしまう。

見たこともない装飾品や食べ物、右も左も輝いて見える街並み。
何も考えずに歩を進めている名前にぎょっとしてアリババは慌ててその手を掴んだ。


「っと名前!ちゃんと前見とけって!」

『わ、ごめんアリババ』
「ったく名前は目が離せねぇよな…」


目の前の足元にある大きな岩に気付かず前に進みかけた名前を制し、息をつく。
このまま歩いていたら確実に転ぶだけでは済まなかっただろう。

よくこういった小さなドジのせいで名前は怪我をするのでアリババは肝を冷やすことが多かった。
故に名前には小さな生傷が絶えないわけだが彼女的には気にしていないらしい。


『ねぇアリババ。あっちの方見てきてもいい?』
「いいけどさ…さっきみたいによそ見して歩くなよ?」


うん、と返事をして名前はアリババが食料を買いに行くのとは反対の道を歩き出した。
後に落ち合う場所を決めて、アリババと名前は別れていったわけだが、時々旅に役立ちそうなものを購入しつつ、ボーっと色んなものに目移りしつつしっかりと言われた通り足元には注意を払う。
言われたことを守るのは良い事なのだが名前のダメなところは1つに注意をすると他の事に意識が行かなくなるということだ。


『(あれ…ここどこだっけ…?)』


ふと気付いた時には自分がどっちから歩いて来たかを忘れていた。
このままだと落ち合う場所にすら向かえない。

またやっちゃったと思いつつ余計に動かないでおくということは学んだ。
迷子になるのがしょっちゅうな名前はしょっちゅうモルジアナの耳と鼻のお世話になっていることは内緒だ。
でもあまりにもお世話になるのはやはり心が痛いので自分でどうにかしようと人を探す。


『あの、すいませんちょっと道をお尋ねしたいんですけど…』
「え?なになに俺らと遊びたいって〜?」


なかなか人が見当たらない中、やっと見つけた人たちに声をかけたのだが後に失敗だったと気付く。


「ちょっと俺らに付き合ってくれたら案内するよ?」
『え…で、でも…その』
「まぁそう固い事言わないでさ」
『ま……待ち合わせがあるんで…』


そう言って拒否の言葉を真に受けるような輩ではなかった。
距離を詰められてどうしよう、と半ば泣きそうな気持ちでこの場を切り抜ける方法を考えようとするが思考は追いついてくれないもの。
こんなことならアリババと一緒に来ればよかったと思うが彼はここにはいない。


『(助けて…!)』


ぎゅっと目を瞑る直前、自分と見知らぬ男の間に人が入り込んできたのが見えて目を見開いた。
その人物は間違えるはずもない、今頭に思い浮かべていた人物。






「すみません、こいつ、俺の彼女なんで!」






アリババに手を引かれて薄暗い道を駆け抜ける。
今の言葉の意味を、名前は後で問い詰めるべくかを考えあぐねていた。






恋を大空に歌いましょう

(…だから気を付けろって言ったろ)
(……ついて来てくれてたの?)
(ぐ、偶然だよ偶然!)

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