※神童成り代わり













ガチャリ、扉を開け放てば吹き差す風に目を瞑った。
髪の毛が風に舞って風に乱れるのを気にせず、剣城はお目当ての人物を探す。

授業中にこんな辺鄙な屋上に来る人物はあの人しかいない。

その確信を胸に視線を迷わせればお目当ての人物はすぐに見つかった。
発見した人影に近付き、ポケットに手を突っ込んだまま声をかける。


「キャプテン」
『ん…』


その人物、雷門サッカー部キャプテンの苗字名前は返事をしたもののそれは寝言ととってもいいだろう。
次に気持ちよさそうに寝息が聞こえてきて名前が寝ているということを確信する。

キャプテンとして毅然とした態度の名前が隙を見せることは少ない。
こうも無防備になっている名前の姿を見るのは珍しい事だ。


「……」


剣城の心に小さな悪戯心が湧いた。
悪戯心、というよりはいつものお返しと言った方が正しい。

辺りに人影がないことを確認し、じっと名前を見つめた。
閉じられた瞳、すぅすぅと微かに開いた唇へと距離を縮めていく。
その距離数センチ。
唇が触れようとした途端、ぱちりと大きな瞳が開いた。


『剣城くん。どうもこんにちは』
「ぅ、おっ!!」


突然のことに思いっきり後ずさりして名前との距離を取る。
名前は笑いを隠せないように口元を隠し、真っ赤になった剣城を見据えた。


『隠れてするならもっとうまくやりましょうね』
「な…!」

『そういう所が可愛いから苛めたくなっちゃうんですよ』
「…男に可愛いって言わないでください」
『そんなこと言うのが可愛いっていうんです』


クスクスと笑いながら顔を背ける剣城に笑みを浮かべる名前は随分余裕綽々だ。
そんなんだから寝こみを襲おうにも襲えないんだろと剣城は言いたくなったが言えば言うだけ反撃の余地を与えてしまうので絶対に言いはしない。
とは言っても付き合っていて学んだのはそれくらいであって報復できたことは今日のように1度もないわけだが。

笑いが収まったところで剣城が名前の隣に腰を下ろす。
未だに犯行が未遂で終わったのは剣城の顔を赤くさせたまま。

『剣城くんが私に隠れてキスだなんて』
「…なんで笑うんですか」
『あらごめんなさい』


収まった筈の笑いがもう一度ぶり返してきて名前の口元が緩む。
そんな名前に少しムスッとした剣城。

今度はなかなか収まらない笑いにさすがに言いたいことがあるのかガッと名前の両肩を掴んで、でもどこか躊躇しながら言った。





「お、俺からさせてください!」





まさかの申し出に笑いも引っ込み、目を見開いていた名前に、剣城は今なら行けるんじゃないかとすら思った。
だが、そう簡単にいかないのが彼女である。


『いやです』


そう言って言って笑う名前の両手を自分の両手で拘束し、真っ赤になりながらも剣城は名前にキスをした。







嘲笑い方法論

(あら剣城くん、結構強引なんですね)
(…誰のせいですか)

_


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -