天馬の双子の妹である名前は天馬とは真逆の性格をしている。
根本の考え方は変わらないのだが表面上に出ているものが違う。

天真爛漫な天馬とクールな名前は兄と妹だが、見ていて面白いところがあった。
サッカーをやっている時は双子特有とでも言おう以心伝心で好プレーをするかと思えば背中合わせで対となるようなところはある意味2人の魅力とも言えよう。


「いつ見ても名前と天馬って似てるけど似てないわよね」

『葵…それってどっちなの?』
「あー!でも分かるかも」
「似てるところは似てるのに全然似てないっていうか…」

「失礼だな!名前は俺の自慢の妹だぞ!」
『天馬うるさい』


耳元で力説する天馬に耳を塞ぎながら言葉で小さく抵抗を見せる。


「ほら、そーゆー所が似てない」
「これだけ見れば双子って感じじゃないもん」


ねー。と顔を見合わせる葵と信介。
双子じゃないと言われて少しショックを受けたのか天馬の表情に影が指す。
それに小さくため息をついて名前は天馬の肩に手を置く。


『大丈夫、天馬は立派なお兄ちゃんだよ』
「…名前…!」

『ほら、練習行こ』
「うん!!」


可愛い妹の励ましに天馬は爛々とグランドへ駆け出した。
単純だなぁと思うと同時に信介と葵は扱い慣れてるなぁと思ったとか。

そんな兄の背中を見ながら名前はゆったりとグランドへ向かう。


「お前も大変だな」
『…慣れてるから、大丈夫』


かけられた声に振り向けばそこにはユニフォームを着た剣城。

『…天馬、もう少し大人しくしてくれればいいのに』

呟いたのは本音ではあるが別に強要したいわけではない。
今のままの天馬が好きなことに変わりはないんだけどもう少し自分も休みたいという気持ちがあるだけ。
疲労からか肩をぐるりと回す。


『…剣城?』
「やる」


突然差し出された一枚の紙。
それは映画のチケットのようだった。
ずっとポケットに入れていたのか若干シワが寄っている。

剣城の顔とチケットを交互に見やり、差し出されたままのチケットを受け取った。


『…いいの?』
「たまには肩の力抜いたっていいだろ」

『…ありがと。……あ』
「あ?」
『これ、ペアチケット』


チケットの端には"1枚で2名まで"と書かれており、名前はジッと剣城を、剣城は名前を見やる。



「……勿体ねぇし俺が行ってやるよ」


アイツとじゃ休めるモンも休めねぇし、とそっぽを向く剣城の頬はほんのりと赤い。
名前はそれに気付かないフリをしてチケットを見つつ少し笑った。





貴方とペアチケット

(剣城…やっと誘えたんだな)
(あいつずっとポケットにあれ入れたまま名前が1人になるの見計らってたし)
(……天馬にバレないことを祈っといてやるか)


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