神童拓人には妹がいる。
血のつながった妹―神童名前は兄に同じくサッカーも上手く成績優秀である。
容姿も瓜二つで、ウェーブがかったアッシュグレーの髪は長さでしか違いを判別できないぐらいだ。
そんな2人。
あえて違いを上げるとなれば、誰もが口を揃えてこう言うだろう。


「「「「性格」」」」


と。






「名前ー!練習終わったらサー●ィーワンにアイス食べに行かないか!?」

『めんどくさい』



ズバッと兄である拓人の発言を切り捨てる名前。
愛する妹の拒絶にショックを隠せない拓人。
即座にベンチの裏でのの字を書き始めた彼に部員皆が哀れみの視線を向けた。

この温度差こそがこの兄妹最大の違い。



「…今日は随分早いな」
『金曜は休みたいから。あ、蘭ちゃん今日晩ご飯ウチ来る?』

「それはダメだぁぁぁぁぁ!!!!」
『帰ってくるの早っ!』


名前の言葉は一言も聞き漏らさないと言わんばかりに再び拓人が舞い戻ってくる。
その元気を試合で発揮すればいいのにと誰もが思うのだが実際口に出すものはいない。


「ウチに呼ぶぐらいならサーティー●ンにしろ!そして俺も行く!」
『……えー………』
「今なら期間限定のフレーバーもあるぞ!」
『…!』
「帰りにアイスケーキも買ってやる!」
『!!』


目に見えて名前の心が揺らいでいるのがわかる。
それでも名前が一度言ったことを覆すのが嫌いなことは蘭丸も承知済みだ。

「…俺、ちょっとアイス食いたいかも」

名前に聞こえるか聞こえないかぐらいの声で蘭丸が呟いた。
すると名前はパァッと顔を明るくする。
やはりこんなところは昔から変わらない。


『ら、蘭ちゃんが言うならしょうがないわね!お兄ちゃんの奢りなら行ってあげる!』


腕を組んで、あくまでも上から目線。それが名前のスタイル。
乱丸を家に誘わなかったからか共にアイスを食べに行けるからか拓人の表情もまた締まりのないものになる。
拓人の言葉をつっぱねる名前に蘭丸が助け舟を出すという3人のスタンスは昔からこんな感じだ。
いつまでたってもガキのままだなぁなんて思うもこの現状に心地よさすらも感じる。


「素直に食べたいって言えばいいのに」

『べっ!別にそんな訳じゃなくて!お兄ちゃんも蘭ちゃんも行きたいって言うからしょうがなくよ!』
「はいはい」


相変わらずなセリフをかます幼馴染に蘭丸はフッと笑った。




If

(どうせなら皆呼んでいい?)
(いいぞ!)
(皆ー!お兄ちゃんの奢りでアイス食べに行きませんかー!)
(…え?)
(ごちそーさん神童)


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