ぼーっと目が覚めた朝の事、シエルは働かない頭を起こす為にとりあえずフルフルと頭を振った。
煌帝国の使節団が訪れているのもあるが、最近はちょっと朝起きるのが楽しい。
白龍や紅玉もさることながら予想以上に使節団の相手をするのは苦ではなかった。

友達として接してくれと言われた以上友達と接するし、シエルもそちらの方が当たり前だが嬉しいものだ。
年の近い友達ができる嬉しさは自分にしかわからない。

コンコンとシエルの部屋のドアがノックされたのは自然と緩む頬に力を入れよし、と気合を入れたと同時だった。



「シエル。起きてますか?」
『ジャーファルさん?』



パッと服を整えドアを開ければ既に仕事を始めていたのかジャーファルが丸められた沢山の羊皮紙を抱えていた。
相変わらず早いですねと目を見開けば普通ですよとジャーファル。
普通ではないことを普通と言えるのが普通じゃないんだと思うのだが言えてしまうのが彼なのだろう。

それはさておき、ジャーファルがシエルの部屋にやってくるとは珍しいことだ。
時にシンドバッドを探しに来ることはあるのだが今日はそうではない様子。

行きながら話しますよと言うジャーファルの後ろを付いて行き、ついでにジャーファルの腕から2、3羊皮紙をふんだくった。
勿論手伝いの為だがジャーファルも少し驚いたようで。


「…随分と慣れたようですね」
『ジャーファルさんが大変そうなので』
「…まぁ…誰かさんのせいですが」

『…アハハ』


シエルは苦笑い。ジャーファルはニコニコの笑顔。
この差は仕えてきた長さの差分なのだろう。

ただしジャーファルの笑顔には黒いものも含まれているが。


『で、これは今どこに向かってるんです?』

「シンの所です」
『シンドバッドさんの?』
「あとアラジン、アリババくん、モルジアナ…そして白龍皇子も呼ばれています」

『…?』


出てきた名前になんの関連性が、と首を傾げたが行けばそれはハッキリするのだろう。


「あ、エルさん!」
『あ』

「…噂をすれば何とやら、ですね」


シエルの腰あたりに重圧感。
アラジンが抱き着いて来たのだと理解するのにそう時間はいらず、その後ろからアリババとモルジアナも現れる。

そういえば白龍は誰が呼びに行ったのだろうと思ったらシンが直々に呼びに行ってますとジャーファルが先手を取って言った。
なぜわかったのだろうと思ったがジャーファルだしいいやとすら思えるようにもなってきた。慣れって怖いものだ。


「シエルも呼ばれてたんだな」
『うん。まだ目的は聞いてないけど』

「教えてくれたっていいじゃないかお兄さん」
「それはシンから聞いてください」
「まぁ行けばわかる事ですから」
『そうなんだけどね…』


言っている内に目的の部屋は目の前。
失礼しますとジャーファルの後ろに続けば既に部屋にはシンドバッドも白龍も在籍していた。
八人将全員もシンドバッドの後ろに控えており、部屋の雰囲気はただならぬものとなっている。


「よぉ白龍!」
「アリババ殿、シエル殿達も…」

「よし、全員揃ったか…」


部屋を一望し、シンドバッドは語り出す。

―必要な面子は揃った。

シエルはシンドバッドに目線をやったが、なぜかシンドバッドは視線を合わせなかった。
そんなことの疑問を持つ前に真剣な表情で再び語り出した、



「集まってもらったのは…他でもない………」




そしてシンドバッドは指令を下す。









「君たちに、"迷宮攻略"に行ってもらう!」












陰陽を彷徨いし

(運命に抗うのは強いものか)
(はたまた弱いものか)






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次回からザガン編入ります(´ω`*)

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