八人将が集められる会議の為、師匠を持たず鍛錬をしていたアラジン・アリババ・モルジアナ。
シエルもまたそうなのだが、如何せん仕事に走り回る日々が続いていた。
鍛錬をしたい気もあるのだが合間を縫って自分なりに色々と試行錯誤はしている。

そんな話を共に仕事をしている者たちに告げれば、時には息抜きも必要だとほっぽり出されてしまったのは今朝の話。
悪いからいいですといったものの働き過ぎだと釘を刺され、それが嫌なら煌帝国の2人の様子を見ていてくれと言われてしまった。
既にあの2人と友人関係になったことはなんとなく知れてしまっているらしい。

ならお言葉に甘えさせてもらおうと思ったところ、廊下で探し人はあっさりと発見できた。


「おはようございますシエル殿」
『おはようございます白龍さん、紅玉ちゃん』
「えぇ」


意外と2人が一緒になって行動をするのは少ないので揃って廊下を歩いているのに違和感を覚える。
何かあったかとシエルが聞く前に口を開いたのは紅玉だった。


「シエル、今日は給仕じゃないのね」
『え?あ、うん。今日は2人に付いてようかなって…2人揃ってどこに?』


そういうと紅玉は付き添いよ、と言い白龍を見やる。
どうやら今向かおうとしている目的地は白龍の目当てらしい。
あまり無断で王宮内は歩き回らないようにしてねと釘を刺し、改めてどこに行くのかを聞いてみた。


「アラジン殿達の所です」
『!』

「私は興味ないんだけど暇つぶしにねぇ」
『なら、多分中庭だね。私も付いてっていい?』
「あら、さっき私たちに付いてくって言ったじゃない」


そういえばそうだった、とシエルは白龍を一度見やる。
多分シンドバッドさんだろうなと直感でわかった。

シエルも思ったことだが、白龍とアリババは似ている。

まだまだ憶測に過ぎない。しかしシエルはアリババの方が少し上にいるのではないかと思っていた。
年齢から考えたらアリババの方が上で当たり前かと思うかもしれないが、この2人の境遇は普通ではない。
王子と皇子、多少は違えど人とは違う人生を歩んできているのだ。

どうしても人という感情の波に流されながら生きるのは正気ではいられなくなる。
それほどこの世界で生きるのは難しく、困難なものだ。


「俺はシンドバッド殿に、シエル殿も学べと言われました」
『え…?』

「…あの方はあの方なりにシエルのことも考えているのね」
「俺もそうだと思います」
『そう…なのかな…』


もう一度言おう、人という感情の波に流されながら生きるのは正気ではいられなくなる。
恋は盲目、という言葉もあるように簡単にに人なんて狂わせられることができるのだ。

だからこそシエルはその心を表に出さない。
するだけ無駄だとわかっている恋心は表に出しても無駄なのだ。


―今はそんなこと考えないでおこう。


考えれば考えるほど生まれる感情は胸を良くも悪くも熱くさせる。
シエルはそれを振り切るように2人の背中を押して中庭に向かうのだった。






素直になれない自分が一番嫌い

(でもそれでいい)

(だって決めたでしょ)
(もう口には出さないって)

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