年も近いということもあってシエルが2人に打ち解けるのは早かった。
元より。紅玉がシエルを気にしていたこともあってか懐いたという形になったと言っても正しいかもしれない。
「シエルは…私たちがこっちにいる間は私たちの女官みたいなものなのよね?」
『最初は白龍皇子だけだど思ってたんだけど…多分紅玉ちゃんの身の回りも手伝うことになると思うな』
「ほ、本当に…?」
『うん』
仕事の内容は増えるかもしれないがやることは大体同じ。
それにシエルとしては増えたとしても紅玉と関われる事を苦とは思わないだろう。
夏黄文の事は気に食わなかったが、それに対する紅玉には好感が持てたし素直に可愛いとも思う。
友達になって欲しいなんて言われたのも初めてだったし、当たり前ながら嬉しい気もいでいっぱいだった。
「俺の方はそんなに気を使ってもらわなくても大丈夫ですよ」
『そうはいきません。白龍さんも大事なお客様なんですから!』
簡単に食い下がってしまっては意味がない。
相手に不自由がないようにもてなすのが自分の使命。
行き過ぎず引き過ぎない程度を見計らって自分はこの2人を守らなければならないのだから。
「随分仕事熱心なのね…」
『仕事…というかやれることやりたいだけ、かな』
「…」
王宮へはもう少し。
そのあとは一度シンドバッドの元に報告に行かなければならない。
いくら友人になったとはいえ建前は一国の姫と他国の従者。
それを考慮しなければまともに合うことはできないだろう。
とは言ってもジャーファルは年が近く話しやすいだろうからとシエルを推してくれたわけだからまたすぐに合えるのではないか、とちょっと期待していた。
「で、でも私をぞんざいにしたら許しませんことよ」
それに、紅玉自身も会たそうにしていることだし。
勿論と笑って返せば照れ隠しかまたそっぽを向く紅玉。
これは早いとこ蹴りつけないと、シエルは思いながら早々と馬車を降り王宮の門番に話を通した。
『後はお願いします』
「わかりました!」
予定していたシエルの案内はここで終わりだ。
紅玉には申し訳ないが一旦はここでお別れ。
ごめんね、と紅玉に苦笑いをして王宮に歩を進めるシエルに待ってください!と声がして足を止めた。
振り返れば真剣な目でシエルを射抜く白龍。
『なんですか白龍皇子?』
「後で…少しお話したいことがあるのですが…よろしいですか?」
『……それなら、シンドバッド様へご報告次第そちらに伺いますね』
「お手数おかけします」
『いえいえ!全然大丈夫です』
なんだろうと思いながら、シエルは彼が自分に吐いたあのセリフを思い出す。
―「貴殿に…一目お会いしたかった」
あの言葉の意味とは。
真剣な眼差しで自分を射抜く白龍は自分に何を見ているのか。
『(答えは後で聞けるかわからないけど、今は報告に行かないと)』
シエルは失礼します、と頭を下げ少し名残惜しそうな紅玉に手を振りながらシエルは王宮を走った。
次は、敬愛すべき王の元へ。
断片世界の誘惑
(でもお2人ともいい人だったな)
(ちょっとこれからに楽しみが増えました)