久々に見た夢。
小さなアリババくんがが他の子供達と町を、スラムを駆け回る姿。
その姿に、アリババくん小さい時からこんなんだったんだと少し笑ってしまった。
こんな夢が見れるのはウリエルの力だろうか。
この夢で見ている姿が事実なのか定かではないが、術中八区彼女が見せる夢は事実だ。
なにを思ってこの光景を見せてくれているかはわからないから、その理由は自分で探さなくちゃならない。
でも、見ていれば見ている程アリババくんは等身大のアリババくんだった。
やんちゃで、好奇心旺盛で、明るくて皆を引っ張っていっちゃうような。
シンドバッドさんとは違う、人を惹き付ける力。
アラジンくんが彼を王に選んだのは正解だと思う。
だからこそバルバットでの内乱はアリババくんには辛いことだったんだろう。
私に情景を語るアリババくんは今思い出してもとても辛そうだったし、悲しそうだった。
しかし目に映る幼少期は楽しそうで、貧しさ以上のものがそこにはあった。
お母さんからの愛、お母さんへの愛、友愛。
愛し、愛されるアリババくんは輝いている。
だから今、アリババくんは強い。
この過去があるから、思い出を胸に強く秘めて生きているから。
羨ましくもあり尊敬すべきもの。
別れも決別も記憶として思い出として、力にする。
『…貴方は?』
背後に一人の人影。
振り向いた先にいたのはドレッドヘアが印象的な男の人。
まだ若干の幼さを残した顔には男の子、という印象も与える。
そして直感した。
聞いておきながらこの人が誰かがわかってしまった。
『…、カシムさん?』
「……あぁ」
ばつが悪そうな、なんとも言えない表情。
私は目を見開いて一歩、カシムさんとの距離を詰めた。
「アンタここに来れるんだな」
『ここ…、と言うと夢ですか?』
「そうだ。…まず普通の人間じゃないだろ」
『ここに来れるのはジンのおかげなので』
「まぁ長時間は無理だろうがな」
カシムさんにはなんとなくわかるらしい。
私がこの夢にいれる時間は短いそうだ。
他人の人間性をこの短時間で理解できるとは思ってはいないが、確かにアリババくんの言う印象からか絶対に悪い人ではないということは分かった。
「アンタに折り入って頼みがある」
『私に?』
「…これをアイツに渡しておいて欲しい」
アイツ、だなんて名前を呼ばなくても分かる。
差し出されたものを思わず受け取って、首を傾げた。
『これをアリババくんに?』
「……勘違いするなよ、これはその…マリアム…、妹からだ」
照れているようなのが私でも見て取れて、カシムさんの不器用な愛を感じた。
くすりと笑いが漏れてしまいそうになったが、それよりも勝ったのは嬉しさだった。
アリババくんとどこか似ているような気がしてやっぱり同じように育ってきた所があると似るのかなって思う。
『絶対、渡しておきますね』
アリババくん、貴方にもとってもいい家族がいるんだね。
「…アンタみたいな人がアリババの傍にいてくれてよかった」
『カシムさん。私の名前はシエルです』
大事な家族から貰った名前。
誇りを持って言おう名前はやはり誰にでも呼んで欲しい。
「そうか…じゃあシエル」
『はい』
「……これからもアイツを頼む」
夢が覚める前に見たカシムさんの表情は酷く柔らかいものだった。
『アリババくん』
「シエル!どうかしたのか?」
『これ、何も言わずに受けとって?』
「…紙?」
手紙と言うにはおこがましいぐらいの1枚の紙切れ。
『渡してくれって、頼まれたの』
「誰から?」
でも、1つの思いを伝えるには十分過ぎて。
『アリババくんの不器用で大事な家族のお友達から』
"親愛なる友へ"
書かれた紙を見た途端、アリババくんの頬には一筋の涙が流れた。
思いを繋ぐ夢
(貴方だって愛されるべき、そんな人)
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一応言っときます
この長編はシンドバッド落ちです←
アンケにカシムがあったので書いてみました
夢って設定便利ですね←
カシムは素直にアリババを心配してそうです。
…バルバット編はホント泣いたなぁ…(・ω・`)
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