爆発音が王宮に響き渡り、事態は赤信号へと向かっていた。


「シン!今の爆発は……!」
「わからん、だが集団でやって来るという線も拭い去れん!行くぞジャーファル!」
「はい!」


シンドバッド自らが現場へ急行するべくジャーファルと走り出した。
今シエルには見張りをつけている。
シエル本人もある程度であれば戦えるようにはなったが混乱状態の中でまともに戦えるとは思えない。
だからこそいち早く、その不安を拭い去るべくしてシンドバッドは走った。
爆発音の元凶であろうその場所には騒ぎを聞き付けた憲兵や大勢の人影。


「何事だ!!」
「シンさん」


既に現場へ来ていたと思われるマスルールが声をあげる。
彼の手によって捕らえられているのは一人の女。


「どうやら彼女がやったらしいんスけど…様子がおかしいんです」

「「?」」


女はただひたすらに涙を流しており、殺気も感じられない。
憶測ではあるが、暗殺者ではないだろう。
それ以前に、シンドバッドはこの女には見覚えがある。王宮で働く下女の一人だった筈だ。
ならば余計に理由を聞き出さねばなるまい。
シンドバッドが女の前に立ち目線を合わせる。
泣きじゃくっていた女がシンドバッドを視界に入れた途端に目を見開き、マスルールに拘束された腕を振り切らんばかりにシンドバッドに詰め寄った。


「王!急いで…急いでシエルちゃんを!!」
「…シエル…?」


「早くしないと…シエルちゃんが……!!」



この状況でシエルの名前が出てくる理由。
爆発は明らかに仕組まれていたものだと思われる。

導き出される答えは多々あるが、どれも決していい答えではないのは確かだ。



「…まず確認したい。さっきのをやったのは君か?」
「っ、は…はい…」

「なぜこんなことを」



零れる涙は収まることを知らない。
女は恐る恐る、ゆっくりと呟いた。


「脅されたんです…」

「脅された?」
「一体誰に」


ジャーファルの問いに、誰も想像していなかった答えが返ってくる。




「剣を持った…セシルさんに…!」




セシルはシエルが一人になるための時間を今までずっと計らってきたらしい。

―シエルの見張りはヤムライハとシャルルカンが交代するときは確実に時間がかかる。
―その間に何か騒ぎを起こせば他の人ではそっちに行き、シエルは無防備になる。
それは一度自分が犠牲になることで実証済みなのだと。

言われて思い出してみれば、あの時セシルの第一発見者はシエルだった。
これは交代時間を見越しての実行。
同時に王宮内の者に容疑をかけたジャーファルの目を盗む為。


もうそこまでくれば言わずともわかる。



「お願いです!シエルちゃんが殺されてしまう前に…!」



聞くや否や、シンドバッド達は走り出した。







「(無事でいろよシエル…!)」








守るべき者に迫る闇は隣まで這い寄ってきている。






掬いあげ落とす手とは

(今度こそ手放さない)
(もう失くしはしない)

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