今夜は謝肉祭。

久々の祭りと言うことで王宮内は大騒ぎだった。
それだけではなく、シエルの帰還を祝う旨もあるのだろう。
あの後にはヤムライハに抱き着かれピスティに抱き着かれシャルルカンに抱き着かれそうになってマスルールがそれを阻止してジャーファルに小言を言われその隙にアラジンが抱き着いてきてアリババが引きはがしてモルジアナに恥ずかしそうにおかえりなさいと言われた。


目まぐるしく過ぎた日だった。

ただ全然それを悪いことだとは思わない。
自分の居場所に帰ってきたんだ、とまた出てきた涙は止まらなくて、シンドバッドに頭を撫でられた。
シエルが放った矢は見事なまでに東南に現れた海洋生物を射ており、故に今回の謝肉祭が開かれることになる。


上手い酒上手い料理、どれもこれも謝肉祭を行うには欠かせない。
慌ただしく王宮内が騒ぎ立てる中、シエルはまた眠ってしまったが祭が始まる頃には丁度目が覚めていた。
初めて見る謝肉祭。
見るもの全てが新鮮で面白く感じる。
好きに回っていいですよ、とジャーファルに言われ控え目に瞳を輝かせながら恐る恐る宴の場へと一歩を踏み出した。


「お〜いシエルちゃん!」


聞き覚えのある声に名前を呼ばれて振り返れば、付き合わされたであろうアリババを隣に、シャルルカンが手を振っていた。
小走りで傍に行き、どうしようと座りあぐねていたらアリババが横にずれてくれたので戸惑いながらも2人の間に腰を下ろす。
シャルルカンの片手には杯。
前方の机にはアリババが使用していたのであろうそれも伺える。
あれ、とそれはシエルに疑問を持たせ疑問は言葉となってアリババへ。


『アリババくん、お酒飲むんだ?』
「え?シエルは飲まねぇの?折角の謝肉祭なんだぜ?」

『でも…私まだ17だし…』
「?アリババもだろ?」
「はい」


そこまでいってから気付いた。
こっちには未成年はお酒が駄目だなんて法がないのだということに。


『私のところは20歳になるまでお酒が駄目だったから…』
「…マジで?俺なんかもっとちっせー時から飲んでたぜ?」
『えぇ!?』

「そう驚くことでもないって。じゃあシエルちゃん今日お酒デビューしちゃう?」
『え…っと…その、遠慮しておきます…』


好奇心から気になる所はあったが、どうにも鼻を刺す匂いがその気を失せさせてしまうのだ。
お酒よりも水や果汁のジュースの方が自分の性に合っている。
誘いを断って話をごまかす様にシャルルカンに酌を注いだ。
一杯の7分辺りで注ぐのをやめた酒をシャルルカンは一気に飲み干し、血色のよくなったほんのり赤い顔でシエルの腕を引き。




「んじゃ、代わりに心配かけたバツってことで」




ちゅ、と音を立ててシャルルカンの唇が頬に触れた。




『へっ!?』




―あと、シエルちゃん泣かせた王サマへのバツだな。






シャルルカンのそんな気持ちは人知れず、ニヤリとこちらを遠目に伺っていたシンドバッドにだけしっかりと届いたのだった。
酒を飲んだ訳ではなく、真っ赤に染まったシエルは唇の触れた頬を押さえ思わず立ち上がり何とも言えぬ奇声を発して走り去って行った。

そして間のぽっかり空いた席とシエルの背中を見つめて、アリババのため息。




「師匠、完全に楽しんでません?」
「まーな。でも、本気かもよ?」


―うかうかしてたら俺が盗っちまうぜ王サマ?





どうせ嘘でしょう、と言うアリババの隣でシャルルカンは自分で酌をして一杯。
同じ酒なのに、自分が酌をした酒はさっきシエルに入れてもらった酒より味が劣るような気がした。







誰も知らない恋歌

(王サマには絶対に教えてやらねー)
(今回は遊びじゃねーからな)



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アンケにてシャルルカンが人気だったので
そしてもちろん私もシャル好きなんで絡ませてみました

シャルは文章書いてて勝手に動いてくれるから好き←

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