その日シエルが身に纏っていたのはジャーファルと同じ正装の神官服だった。
数日前、神官服で宮中を歩き回るなら異国からの客が来た時に正装も必要になる時が来るかもしれない、と用意してもらったもの。
ちゃんと着れるかな、と試しに着てみたもののこれがなかなか着心地がよく今日はそのまま過ごそうということにしたのだ。
慣れないクーフィーヤは頭からよくずれたものの、久々に露出の少ない服を着た気がする。

特にどこに行くわけでもなかったが宮中を歩いていると前方からいつものようにきっちりと正装を着こなしたジャーファルが小走りでこちらに向かってきたのが見えた。
こちらも姿を発見するとジャーファルがシエルに寄って来たのでシエルは素直に足を止める。
その表情は決してよろしいものではなく。
なんとなく状況を察することができる。


「シエル!シンを見ませんでしたか?」
『あ…やっぱりシンドバッドさんですか…。シンドバッドさんならさっきアラジンくんと一緒にいましたけど…』
「ったくまたサボりか…!すいませんありがとうございます」
『あ、私も行きます』
「そうですか?そうしてくれると助かります」


予想的中というかなんというか。
肩を並べて目的地…シンドバッドの元に歩を進める2人。

ジャーファルにもいい加減胃に穴が開くんじゃないか。
道中語られる愚痴の数々に苦笑いが漏れる。
でも悪態はつきつつも長くに渡り支え続けてきた腹心の部下。
部下の鏡というのはこういう人のことを言うのだろう。


「あれ?ジャーファルおにいさんにエルさんだ〜!」


アリババくんも一緒だったんだ、とアラジンの隣に立つ彼を見つつ、探し人の片割れはやって来た。
ただし問題の探し者がいないが。


『アラジンくん!さっきシンドバッドさんと一緒にいなかった…?』
「さっきまで一緒だったよ!」
「…ただそろそろジャーファルが来るかもしれないからってどこか行っちゃっいましたけど…」
「あんのグータラ主が……!」


無駄に働く回避本能にジャーファルの眷属器が火を噴きそうな勢いだ。
どうどうとそれを抑えつつ2人にどこに行ったかわからないかと聞けば分からないとアラジン。
この瞬間、ジャーファルの青筋が一つ増えたことだろう。

怒りを隠せずにいるジャーファル宥めるシエルの姿を見てアラジンが今まで感じていたとある違和感に気付く。


「今日はおにいさんとお揃いの服なんだね」
『あぁ、神官服のこと?』
「この前シンが用意させてたやつでしょう?」
『はい』

「なんだかこうして見てると兄妹みたいに見えるな」

「『……え?』」


アリババの言葉にパッと目を合わせ目を見開く。


「本当だ!」
「だろ?どっちも銀髪だし性格も控えめだし」

『……兄…妹…』
「…考えたこともありませんでしたね…」


容姿的にも性格的にも、確かに類似するところはあるかもしれない。
だが互いをそういう風に思ったことはなくて、そしてそのような概念を持ったこともなかった。
兄妹、というものがどんなものかも理解しがたくでも悪い気はしないでいる。


『ジャーファルさんがお兄さん、いいかもしれません』

「そうですね。私もシエルのような妹であったらいいかもしれません」


シンドバッドが言っていたように、ここにいる間は家族だもの、とシエルは思いながらジャーファルと顔を見合わせて笑った。




似たり寄ったりな笑曲

(じゃあシンドバッドおじさんがお父さんだね!)
(というかあの人はシンドリアの父だろ)
(そう思うと…子沢山だね…)
(律儀にそんな想像しなくていいですよ)

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