※マギのコミックス9巻発売記念のペーパー漫画ネタです




























『とりあえず聞きますけど…一体どうしたんですか』

「ドッジボールをした!」
『嘘でしょうその傷』


なぜか全身ボロボロなシンドバッドにシエルは問うたが清々しい笑顔で返ってきた回答を間髪入れずに否定した。
ジャーファルとマスルールは既に自分の仕事に取り掛かっている。
なぜにこんなにシンドバッドだけが傷だらけなのか。
何があったのか、状況がわからなさ過ぎる。


「ドッジボールをしたというのは合ってますよ」
『えぇ!?じゃあなんでこんな傷…』

「…モルジアナが…投げた」
『………あぁ……』


なんとなく状況を察せるようになってしまった。
モルジアナであれば確かにマスルールとまではいかないが腕力だけで言えば確実に群を抜いているであろう。
…ただのボールでそこまでになったとは考えがたいものもあるが。


『と、とにかく治療しましょう!』
「大丈夫だぞ?これくらい」
『ダメです』
「いや慣れてるし『ダメです』


着席。
言わんばかりのオーラに珍しくシンドバッドが折れた。
お願いしますと本を抱えて部屋を出て行ったジャーファル。マスルールはそれに同行する。

自分を含めてだが怪我をすることが多いので治療道具をがどこにあるかは熟知済みだ。


『…むやみやたらに怪我しないでください』
「君がそれを言うのかい?」
『それはそれこれはこれです』
「身も蓋もないな」
『そうですね』


えい、と薬をシンドバッドの腕に余計に塗りたくる。
若干声を漏らしたシンドバッドにシエルは容赦ない治療という名の攻撃。


『誰も傷付いてなんか欲しくないんですから』


矛盾だってわかっている。
言われた通り自分はよく怪我をするし心配だってかける。
でも自分のことを棚に上げてでも他人には傷付いて欲しくない。

包帯を巻くまでには至らないものの傷は痛々しい。
例えそれが遊び事でついた傷であっても。


「…大丈夫さ」


傷付いた腕に触れていたシエルの手にシンドバッドが己の手をそっと手を重ねた。
目を目が合い、視線が交錯する。


「俺は絶対に君を悲しませたりはしない」


黄金色の瞳に映るシエルの姿。
紫色の瞳に映るシンドバッドの姿。
互いが互いに映した姿。

シエルが見た自分の姿はとても泣きそうな顔をしていた。



『約束…ですからね』
「あぁ」



思わず日向に手を置いてしまうようなさりげない暖かさ。
きっとこの笑顔に、声に、温もりに。

これからも救われてしまうんだろうなぁと思いながらもシエルは目を伏せるのだった。




願いを込めた夢想曲

(……さぁ、仕事ですよシンドバッドさん)
(…最近ジャーファルに似てきたな)
(気のせいですっ)

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