「ねぇねぇ」

『え、…はい?…私?』
「そうそう。ね、貴方が最近噂のシエルって子?」
『そう…ですけど?』

「ふ〜ん…」


声をかけられ、振り向いた先にいたのは自分よりか背の低い女性…いや、少女なのか見分けのつきにくい一人の人物の姿があった。
直感的には年下、と判断したもののなぜかポロリと口から零れたのは敬語。
こっちに来て大分敬語が癖になっている。

基本的に年上の多い王宮内、年下なのはアラジンとモルジアナぐらいだし同い年と言えば思いつくのはアリババぐらいだ。
それに、アリババしかりこちらの人は見かけによらないことも多い。
にしても目の前の彼女は一体自分に何の用だろうか、というか噂ってなんだ。と色々言いたいことが巡る。


「あ、ごめん。そっちはあたしの事知らないよね。あたしはピスティ、こう見えて八人将の一人だよ!」

『…八人将!?』


あのジャーファルさんやマスルールさんと同じ!?
喉まで出かかった言葉は飲み込んだ。
そうは見えない、だなんて言えない。
自分よりも華奢であろうピスティがあの屈強な戦士であるマスルール達と肩を並べている姿が全く想像がつかず思考が混乱の一途を辿る。


『……失礼ですがピスティ…さん、年齢は…』
「あ!疑ってるな〜!私これでもシエルより年上の18歳だよ!!」
『18…!?』

「そう!貿易船の護衛からやーっと帰ってきたんだから。帰ってきたら帰ってきたで面白い話は聞くしシエルに会いたかったんだよね〜」


ピスティは自分より年上で八人将。
さすが異世界、不可思議なことがあるもんだと無理に納得させることにした。


『あの、面白い話って…?』
「え?違う世界からやってきたウリエルの主でなんか王と八人将皆がやたら気に入ってる女の子の話」
『…!』
「いや〜それにしても皆が気に入るのもわかるね。可愛いし細いしおっぱい大きいし」
『おっ…!?』

「ヤムもだけど世の中不公平だよ〜。シエルもオシャレとか気使ったらもっと可愛くなるのに。私服とかは?」
『ありません…けど』
「うっそ!王ってば気利かないんだから…。今度一緒に服買いに行こう!」

『でも…その、私お金とか持ってないですし…』
「私が王に口きいてあげる!きっといくらでも出してくれるわよ」


ジャーファルさんも随分気に入ってるみたいだから大丈夫。とシエルに比べれば平らな胸を叩きピスティが胸を張る。
人は見かけで判断できないものだと改めて思った。

このパワフルさあってのピスティか、とシンドバッドに金をせびるピスティの姿がなぜか容易に想像できた自分は結構こちらに馴染んできたのではないかとすら思う。
いつの間にかピスティのペースに巻き込まれてしまい、あっという間に今度ヤムライハ、ピスティと共に服を買いに行く約束が取り付けられてしまった。
女の人と買い物、だなんて。
気恥ずかしさと共に、これが"普通"の女の子にあるべき姿なのかな、と少し嬉しくもある。


ただ…。


「よっし!じゃあ今からお金せびりに行くぞー!」
『今からですか…!?』
「シエルの色仕掛けがあれば効果抜群だし!」
『え…遠慮しときます!!』


凄く振り回されることは確かだ。





元気を貰う器楽曲


(おーピスティ。シエルに会ったか)
(うん!でさ、シエルの服買いに行くお金が欲しいんだけど…)
(シエルの服?よし、そういう事なら任せておけ!)
(さっすが王太っ腹ー!)
(ピスティ。貴方の分ではありませんから余計には使わないように)
(えー!!)
(後でシエルに確認しますからね)
(ちぇー)

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