長時間机に向かっていればいやでも重くなる肩。
その上いつもよりも重い体で仕事をしていれば疲労も溜まりやすいのだろうか。
シンドバッドの体で向かい合う書類の量はいつも自分が手伝う量よりもはるかに多くて。
ジャーファルに追い掛け回され色々されながらだとは言え、いつもこの量を最終的に捌ききっているこの体の主に、シエルは改めて凄いなぁと尊敬の念を抱いた。
「大丈夫ですか?」
「はい、なんとか」
「お疲れ様です」
労わるようにかけられた声に大きな背もたれの付いた椅子に体重を預ける。
今頃自分の体は楽しく買い物でもしていることだろう。
何か問題を起こしていないかと不安になるものの、そこは王の人間性を信じることにしよう。
「大丈夫でしょうか」
「まぁ2人も着いて行ってますし…」
「片方ピスティさんですけど」
「……大丈夫ですよ、多分」
あ、多分が付いた。
そして若干変な間が空いたことをシエルは聞き逃さなかった。
まぁあのトラブルメーカーであるシンドバッドの事だ。心配をするなと言う方が難しい。
心配なことはあるが送り出してしまった以上は帰ってくるのを待つしかない。
ジャーファルはシエルが終わらせた大量の書類を抱えちらりと現在の時刻と未だに机に残る書類を確認する。
「シエル、今日の分はもういいですよ」
「え?まだ残ってますけど…」
時間も終業じゃないしやりますよ、と申し出たシエルだったが、ジャーファルは先程下の者に指示をしに行った部屋の騒がしさを思い出した。
「……事情を知らない下の者たちが王がまともに仕事してる、と騒いでいて仕方ないんです」
「…………え…」
「なので今日はこの辺りで十分でしょう。ありがとうございました」
王が仕事をしていて騒ぐってそれはそれでどうなんだ、と思う。
普通なら王が仕事に向き合うならば周りも活気付いてもよさそうなものだが、そうでないのがシンドバッドらしいというかなんというか。
ならばお言葉に甘えて休ませてもらおう。
シエルがこの時間で凝った肩を解す様に首を回す。
それなりに時間が経っていたとは言え簡単に疲れが出てしまうとは自分が軟弱なのかなとシエルは元の体に戻った時にはまた体力作りでもするかと決意をする。
「バッカ殿ー!」
「「!??!?」」
完成した書類を整理してきますと席を立ち部屋を出て行こうとした直後、妙な気配と共に今までの平穏をぶち壊す、あり得ない程のけたたましい音を立てて王宮に1人の人物が飛び込んできた。
その姿を目視する前に書類をぶちまけ武器を構えたジャーファル。
さっさとここから消えろと言わんばかりの殺気を放ったがそれを彼が真に受けることはなく。
シエルが彼の、楽しそうながらも不敵な笑みを浮かべたジュダルを視界に入れたころには既にこの部屋は最悪の舞台となりつつあった。
シンドリア魔力暴走事件簿15
(あっれーなんでバカ殿そんな驚いてんだよ)
(………タイミング悪いな…)
(……………あ?)
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結界はとか気にしちゃダメです←
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