「私は恨む…"運命"を…恨んでやるわ!!!」


そう仕組んだのは私。
運命を憎むべき存在にし、堕の道を歩ませるように闇に立ったのは私自身。

信じるモノは何もない。
ただ自分のこの力だけを信じ今までを歩んできた。
例えあの短剣に封印されていようとも。
私は私であって変わらない、筈だった。

表の私、裏の私。
そして"主"である"私"


全ては共通して"私"なのだ。


だからこそ言える。
この3つの私は全員、"運命"を恨んでいる。

あのシンドバッドと言う男の意思も。
その男を愛したシエルという名の私も。

全て闇に堕ちてしまえばいい。

光に生きて苦しい思いをするのであれば、私は闇に生きることを選ぶ。


『……ッ!!』

「ねぇ、エルさんには帰らないといけない場所があるんだよね?」
『知るか…ッ!"器"のことなど…!』
「おじさんは待っているよ。エルさんのことも、……それに、"エルさん"のことも」

『!』


あの時腕を引かれて、そして合わさらなかった唇に熱が集まってくるような気がした。
誰かに愛し、愛されることがそんなに幸福だというのか。


「ルフに何を伝えられても起きてしまった辛いことは消えるわけじゃない」

『…あぁそうだ。ドゥニヤとイサアクに起こった災厄も、全ては消えない』

「でもね、それじゃあ勿体ないよ」


しかしドゥニヤは、イサアクは、歪んだ道に足を踏み外すまではあんなに幸せそうだったではないか、と。

七海の覇王。シンドリアの王。第1級特異点。
後に呼び名などどうでもよくなるぐらいに。

この"器"である"私"は、あの男―シンドバッドを



「運命を恨むことは…不幸だからね」



愛しているとでもいうのか。




「"ソロモンの知恵"!!!」




白いルフが、輝かしい光が私の視界を包み込む。

私に手を差し伸べる沢山の者。
知ってしまった暖かさ。

だが私の頭に過るのはその差し伸べられた手が冷たくなり動かなくなる最悪の未来。



『ソロモンよ、貴様は尚も私の前に立ちはだかるというのか…!』



私が知っているのはこんな明るい未来ではない。
全てを黒に染める、それが私が存在している理由。

―だから私の力は"夢"なのだ。

夢とはなんと都合のいいことだろう。
ある時は現実として、ある時は夢として片付ければ楽になれる。
しかしそんな夢を支配すれば、その虚無感は一気に増してしまうのだから。


白と黒の視界に包まれて、私の意識はまた堕ちていく。


次に、目が覚めた時。




私は――――







転げ落ちた矛盾の矛

(灰色だなんて許されない)
(私は黒。何者にも染まらない、黒)

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