一悶着あった風呂にも無事に浸かり、すっかり気分を良くしたシンドバッドは今度はシエルの姿で街に行きたいと言い出した。
確かにこの国の王であるシンドバッドが街に降りるとなれば護衛やらなんやらで面倒なことになりかねないがシエル(の体)が外出するとなれば話は別だ。


『一度は自分の国を普通に歩き回りたい!』


そう言って聞かない我を通すのは何をしても変わらないようだ。


「シン、あまり我儘は言わないでください」
『我儘じゃないぞ、願望だ』
「…貴方の願望は我儘とイコールで結びついてるんですよ」


しかしジャーファルと話している自分の体は何度見ても慣れそうにない。
シエルはシンドバッドの体で大きなため息を吐くといつもより幾分重い体で立ち上がりジャーファルの肩に手を置く。


「1日ぐらいならいいんじゃないですか?」
「しかし…」

「それに、私が仕事しておけば問題はないでしょう?」
『本当か!?』
「シンドバッドさんだって、普通の人になりたいことってあると思いますし…こんな機会ないと思うので」


「…なんか…変な光景だわ…」
「うん…ジャーファルさんを労わる王様と2人におねだりするシエルかぁ…」


傍から見ればおかしな光景も本人たちからすれば色々な気持ちが交錯している。
今までどう足掻いても叶わなかった願望の1つが今現実になろうとしているのだ。

瞳を輝かせているシエルの姿はまず普通ならあまり見ることはできないだろう。
誰かと中身が入れ替わるなんてあり得ないことは楽しめと思っているシンドバッドに心配はあるものの今やその体はシエル。
シエル1人で街に降りると変な虫が着くという別の心配があるのだが流石のシンドバッドも男には興味はない。


「…絶対にすぐに帰って来てくださいよ…」
『わかった!』

「ただしヤムライハとピスティも連れて行ってください」
『………』
「シエルの体でそんな顔してもダメです。それは私も譲りませんから」


視覚的にはジャーファルとシエルが言い合っているように見えてある意味微笑ましい。


「それぐらい我慢してくださいシンドバッドさん」
『…仕方ない』

「私の体ですけど、楽しんできてください」


そうと決まれば、という感じでシンドバッドはヤムライハとピスティを引き連れて王宮を駆けて行く。
注意すべき点はまだ沢山あったのだがきっと言っても無駄だろうとシエルはそれを止めなかった。
逆にジャーファルはまだ心配なことが絶えないのか駆けて行った背中に手を伸ばしていたが無意味に終わったようだ。


「…いいんですか?」
「何がです?」
「シンにあんなことをさせて…貴方に無事に体が返ってくるか分かりませんよ?」
「…大丈夫ですよ」
「随分落ち着いてますね…」

「あの人は誰かの体で変なことする人じゃないですから」


そういった直後、王宮の入り口が騒がしくなるのを見て前言を撤回したくなるのは秘密である。





シンドリア魔力暴走事件簿14


(さーて、ひっさびさにバカ殿にちょっかいでもかけに行くか)

(?)
(シエル、どうかしましたか?)
(いえ…なんでも)

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