この番外シリーズはマギのBD1巻の特典である「シンドバッドの冒険」をもとにつくられています
なのでそちらの方を読む予定がある方にはネタバレ注意とさせていただきます
読んだ後での苦情は受け付けませんのであしからず
それではどうぞ^^
事の発端。
私が目を覚ましたのはとある町の一角のようだった。
またウリエルが私に何かをしたのだろうか。
心の中で彼女に問いかけたけど返事はない。まったくひねくれたジンなこと。
見回した町並みは見たことあるようで見たことがない、不思議なものだった。
ふらりと立ち上がった私の視界にはたくさんの人。
しかし人の中でも見えるのは女性と子供が多く、男性と言われるような人があまり見当たらない。
違和感を感じつつもまずはここがどこかを把握するために辺りを探索し、あわよくば人に話を聞こう。
そう思って歩を進め、お世辞にも綺麗とは言えない瓦礫の崩れた角を曲がった。
「うおっ!」
『きゃっ』
互いに思いっきり体をぶつけ、尻もちをついた私の耳に入った聞きなれた様な、でも少し違う声。
『……え…?』
「いてて、大丈夫か?」
ぶつかった相手の人物はこけなかったのだろう。
顔を上げて目の前で私に手を差出してそう言った彼と視線が交わる。
―嘘
目を見開いて私が見つめた先にいたのは私が思いを馳せて止まないあの人。
…の幼い姿が目の前にあったのだから。
夢と現実の境目、というのは一体なんなのだろう。
自分が夢と、現実と認めた時?
頬をを引っ張って痛みを感じる時?
「?見ない顔だな。新入りか?」
もう夢も現実も勘帰れば考えるほど訳が分からなくなって。
でも今この思考をしている自分は間違いなく自分なわけで。
ゲシュタルト崩壊を起こしかねない思考に終止符を打って、とりあえず自分の頬を引っ張ってみた。
『……痛い』
しかしこれは現実ではないということを私は理解している。
「なにやってんだ?」
『あ…ごめんなさい』
「変なヤツだな!」
頬を引っ張った手を取られグイッと立たされる私。
目の前に広がる光景は、夢というには鮮明過ぎて。
そして現実と呼ぶには
「俺の名前はシンドバッド!お前は?」
あまりにもかけ離れた光景が目の前に広がっていたのだから。
都合のいいことに私がここにいる経緯は全く思い出せないのだ。
もしかしたら執務中にうっかり寝てしまったのかもしれないし、何か事故があって気を失ったのかもしれない。
どの道、私の意識が今ここでハッキリしている以上"現実"の私がどうなっているかを確認するのは不可能。
でも私は難しくことを考えるのをやめた。
ここはきっと夢。
痛みも感じるし五感も全て働いているけど、夢だと思う。
じゃないと目の前にいるこの人の説明がつかない。
「どうした?まさか記憶喪失とかか?」
『え、いえ…わ、私はシエルと言います』
「シエルか!いい名前だな」
にこっと笑う少年―もといシンドバッド……くん…は、確かにあの人と同じ面影を持っていた。
思わず素直に名乗ってしまったが大丈夫だったのだろうか。
目の前の彼は多分私より年下…だと思う。
後ろで結われた長い髪は今と変わらない。
しかし襟足の髪はまだ短く、この髪が伸びればますます私の知っている彼に近付くことだろう。
不思議な経験にはだいぶ慣れたと思っていたが、どうやらそんなことでもないらしい。
シンドバッドの冒険1
(夢か現か)
(しかしいつものように、貴方の笑顔は眩しくて)
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BD特典があまりにも天音に妄想を爆発させたのでやらかします
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