「着いたぞ!!"迷宮ザガン"がある島だ!」



数刻ぶりに降り立った地面。
不安定でなく安定した足元に思わず皆は地面を踏みしめる。

休みがてら睡眠を取っていたはずなのに、とこか体は気だるいまま。



―「こっちだよ」

『…っ………』



ふらりと足元が勝手に樹海に向いていく。
まだアラジンたちは砂浜で話しているというのに。

待って、まだそっちには行きたくない。
心と裏腹に動く体。
呼んでる。ずっと彼が自分を呼んでいる。


「エルさん…?」
「シエル!?」


アラジン達を完全に置いてけぼりにしながらもまるで元から道を知っていたかのようにスラスラと樹海を進んでいく。
待て、と叫ぶ声も全く耳に入らない。
ただただ導かれるように樹海をかき分ける。

しかしアラジンは感じていた。
ルフたちのザワ付き、シエルを渦巻く白いルフ達。
正と負の期待感。




―「俺はこの日を待ってたよ」







「…シエルさん!」

『っあ……』
「…!?」


慌てて追いついたモルジアナの見たシエルの瞳は。
振り返った一瞬見えた真っ赤に染まる赤。

しかし瞬きをして改めて顔を合わせた時に見えたシエルの瞳は澄んだアメジスト色だった。


『あ…ごめんね、なんか足が勝手に…』

「それより……今」

『え?』
「…いえ、なんでもないです」


見間違いだったのだろう。
そう自分に言い聞かせモルジアナとシエルはその場で3人がやってくるのを待った。
その間もずっと頭はガンガンと痛む。
なんなのだろう、この頭痛は。この声は。


「シエル殿!」
「シエル!大丈夫か…!?」
『うん。なんかごめん…うまく言えないんだけど…その』
「いいって!さっきからちょっと体調悪いみたいだし…」
「無理はしないでください」
『…うん。ありがとう』

「ねぇ皆!あれがそうじゃないかな?」
『え…?』


もうそんな所までやって来ていたのか、と驚くと同時にモルジアナはザガンの入口に輝く何かを発見した。


「どうしたモルジアナ?」
「今、何か光って…?」




―「さぁ君たちを招待するよ!」

『ザガン…!?』




迷宮の入口と思われる場所から伸びた光の糸。
それは5人の周りを羅介し、そして。


『きゃぁぁあぁああぁ!!!』

「アラジンっ!!?」
「シエル殿っ!!?」



体が迷宮に引っ張られていく。
この光が導く先がザガンだということは明白だが、そのザガンがどんなものかわからない以上これは未知への一歩であり危険への一方通行である。

引き込まれていく光の中。
アラジンやアリババ、モルジアナは知っている。

これは"迷宮の聖門"

人々がそう呼ぶその扉の先に待っているザガンが口にした言葉は。





―「君をずっと待ってたんだ」








待ちわびる彼、やってきた彼女

(この日をどれだけ)
(待ち望んだことだろう)

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