精神的にも肉体的にも、迷宮攻略には疲労が付き纏う。
魔力を使うアラジンやシエルは特に肉体の消費が激しい。
疲労感というよりエネルギーのなくなる空腹感が勝る、と言ったほうが正しいだろうか。

白龍とも和解し、改めて交友を深めようということで沢山の荷物の中に詰めてきたご飯を食べることにした。


『ごめんね、モルちゃんばっかりに荷物持たせてて…』
「確かに…女性ばかりに荷物を持たせるというのは」
「いえ、これぐらい重いに入りませんから」
「さすがだねモルさん!」


持ってきた食料を広げながら他愛もない会話をするのは心安らぐものがある。
やはり本音でぶつかり合わなければこうはならないのだろう。

食料と言っても一応日持ちのいいものとそうでないものを分けてある。
なのでまずは日持ちしないものから、ということでシエルは広げられた食料の中から大きめの弁当を取り出して蓋を開けた。


「わー!このお弁当おにいさんが作ったのかい!?」
「いえ、シエル殿と半分ずつで作りました」

「うまそー!いっただきまーす!!」


色とりどりのおかずが所狭しと並んだ弁当箱。
いち早くそれに手を伸ばしたのはアリババで、続いてアラジンが手を伸ばした。
ガツガツと掻き込まれていく姿を見るとどこか元気を貰える気がする。

自分が作ったものを美味しそうに食べてもらえるのは嬉しいことだ。
隙を見てモルジアナの分をよそり、白龍とモルジアナとシエルはまったりと食の手を進めていた。


「シエルさん、そんな少なくていいんですか?」
『うん。私小食だし』

「いえ…魔力を使うとお腹が減るのでは…と思って」
『それなら大丈夫。私元からの魔力量が多いみたいで魔力を消費してもあんまりお腹が減らないの。白龍くんこそお腹減ってない?』
「はい。お気遣いありがとうございます。モルジアナ殿こそあれだけ動かれて…大丈夫ですか?」
「私は大丈夫です」


3人が全員互いを心配をし合うのがどうにも面白くて、顔を見合わせてクスッと笑ってしまった。
しかしそんな会話をしっかりと聞いていたのか、アリババは唐突にアラジンに弁当を譲り出す。
そっちの方が効率がいいことはアリババもしっかり理解しているらしい。

そういった細かい気遣いができる辺りに、白龍はまたアリババの器を見た気がした。


『大丈夫、白龍くん。焦らないで』

「はい…」
「私たちが付いてます」
『そうそう』
「でも」


まだ何かを言おうとした白龍の口にシエルはえいっと摘んだ弁当のおかずを白龍の口に押し込む。
物理的に塞がれた口からはもごもごと声にならない声が。



『暗いこと言うの禁止っ』



せっかくのご飯が台無しだよ、とシエルは笑う。
白龍は押し込まれたおかずをしっかりと咀嚼して飲み込み、そうですねとまた自分の分のおかずを摘んだ。

つかの間の休息が与える安らぎ。
この先にはまた困難な道が待ち受けているのだろうか、まだ皆にはわからない。
ザガンの意図も掴めないし、シエルは自分の力についてもっと知らなければいけないのかなとすら思っている。
考えるよりも先に動かなければならなくなる、そんな道の先に。





安らぎの間

(こっちおかず作ってのってエルさんさん?)
(ううんそっちは白龍くんだよ〜)
(あ!こっちは絶対シエルだろ!)
(残念そっちも白龍くんでしたー)

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