ザガンの消えていった宙を見上げ、消えていった道筋を示す光の輝きが降り注ぐ。


「なんだよ…あんな奴が"ジン"なのかよ……!?」


非道の限りを尽くしたと、今の時点ではそんな印象しか残らなかった。
その上少女は囚われたまま。
助けを求めた手を掴むことは許されず、皆は苦い表情を見せる。


『そうだ。私のようなジンもいればあいつの様なジンもいる』
「でもよ…!」

「大丈夫じゃよ……あやつとて"ジン"じゃ…宝物庫まで辿り着く者があれば、王の器を選ぶ気は残っておるようじゃ…」
『…あぁ、なんだかんだ言って少年たちを値踏みしていたな』
「それよりウリエルよ、もういいぞ。すまんかったな」
『別にいい。…と言いたいところだが主の魔力だ』
「わかっておる」


実体化していたアモンはアリババの短剣にまた消えようとしていた。
小さなルフとなってアモンの体は小さくなっていく。


「ア…アモン!なんだよ、出てきてもう消えちまうのかよ!?」
「うむ…今回は"マギ"の力を借りておらん上、今はこやつの力を借りているからの…」
『先程も言っただろう。迷宮内はルフ濃度が濃い、あまり魔力は使わないで実体化ができるが…』
「今はウリエルの…いや、シエルの魔力で実体化してるってことだよな…?」
『そういうことだ。あまり主に負担はかけられない』


理屈はわかるのだが、魔力で実体化というのもまた非現実な話だ。

だが、それを聞いているだけだと疑問が残る。
アラジンはそう思いアモンに問いかけた。


「…地上では大きな力を使うから僕がいくら呼んでも出てきてくれなかったのかい?」


マギたるアラジンの干渉あれば実体化ができるのではないか。
そうすればアモンたちはいつでも実体化できる。
根本としてはそうなのだろう。

しかしアモンは首を横に振る。

ージンは本来、地上では実体化すべきではない。
―ジンはあくまでも、地上の王が使う純粋な力なのだ、と。


「その為に、我々はソロモン王に作られたのじゃからのう」
『…ソロモン王…か』

「さらばじゃアリババ…しばらく会うことはないじゃろう…」
「アモン…!」

「そうじゃアリババ…最後に…お主に伝えねばならんことが…」
『…私の"夢映し"で伝えるが?』
「いや…今言わねばならん…」

「なんだ!?なんだよアモン!!」
「ワシ……ワシ…」


今すぐに伝えなければならないこと、緊迫した雰囲気を感じた。
他人の夢に鑑賞するウリエルの"夢映し"を断り、アリババに対面するアモン。
伸ばした手を支え、アモンの言葉を待つ。



「……もうすぐ…生まれる…」



愛おしそうに自分の腹を撫でながらそう言い残して、アモンは消えた。

「…何言ってんだ?あのジイさん……」

表情に気持ち悪さを滲ませ、アモンの消えた短剣を見つめるアリババ。
生まれる、とはどういうことか。
言葉の意味をそのまま捉えたら、確かに大層気持ちが悪い。

しかしウリエルはふっと笑い、アリババ以外の3人を見つめた。


『なるほど…優秀なのが生まれそうだな』
「…は?」

『私もそろそろ消えるとしよう。主を頼んだぞ』
「あ、ちょっと待ってよ"エルさん"」
『……私か?』
「うん。ウリエルのエルで"エルさん"」


アラジンがウリエルに笑いかける。


「ねぇ、"エルさん"はなんで周りとの干渉を嫌うんだい?」
『…私の勝手だろう』

「それは本当に"エルさん"自身の為?それとも周りの為かい?」


『……マギよ、これ以上"ウリエル"に関わろうとするな。これは忠告だ』



失礼する、とウリエルは瞳を閉じてパチンと小さく指を鳴らした。

辺りの空気が変わったのがわかる。
閉じられたシエルの瞳は赤から紫へ。



『ん……ただいま』

「おかえりエルさん」



そして彼女の忠告の意味を、皆は後に知ることとなるのだ。




天上の君、星の世の君

(ウリエルとシエル)
(一心同体の彼女たちは決して交わらない)


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デフォ名とウリエルのアラジンからのあだ名一緒になっちゃったってことでややこしいかもです…!
"これ"でわかりやすくはしていると思うのですがわかりにくいって意見があったら改変しますので!
今はこのままお付き合いくだされば嬉しいです;

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