顔を隠すように覆い隠された仮面は怪しい瞳のみを映し出す。
瞳に似た怪しさを醸し出しているザガンは6人に対峙し、シエルの体はずかずかと前へ進んでいく。
「ウリエル!やっと会えたね」
『体は主だ。粗相をしたら貴様でもタダではおかない』
「おー怖い怖い!相変わらずだね君は。…まぁ、だからずっと呼んでたんだけど」
呼んでいた、という言葉に含まれる意味は今までのシエルが感じていた違和感に直通していた。
一心同体に近いウリエルへの干渉は必然的にシエルにも干渉をすることに繋がる。
ザガンの言葉に、シエルの右腕に光る金属器は武器化され、光り輝く矢を構えた。
『何度も何度も無駄な努力ご苦労なことだ』
「そんな物騒なもの構えないでよ〜」
『貴様はいけ好かない』
「まぁまぁそう言わないで。ホントは僕は君だけをここに招待したかったんだけど……」
「!?」
ザガンの腕が掴んだのは先程危機からの合流を果たした少女。
突然のことに小さな体で抵抗できるはずもなく、アリババたちも反応すらできなかった。
ウリエルすら目を見開いてザガンに囚われた少女を見つめ、少女はザガンの手の中で悲鳴を上げる。
鋭い爪が眼前に迫り恐ろしく思わない筈がない。
やめろ!と響いた声は白龍のもので、迷わずザガンに刃を向ける。
「その娘を放せ!」
「……ウ〜ン?」
その行為に疑問を感じたのか、顎に指を沿え頭をかしげるザガン。
ここに少女が来てしまったのは自分の責任。
ならば助けることも自分の責任だと、少女を助けることしか頭になかった白龍の腕に違う手が添えられた。
『……弱さを認めぬ弱き者よ、刃を向けることに生き急ぐな』
「な…!?」
パァっとウリエルの触れた白龍の腕が光った。
光が止んでも何かが変わっただけでもなかったが、ウリエルが何かをしたのは確か。
何が起こったのか分からぬまま、振り返りザガンに対峙したウリエルの背中にあったのはやはりシエルの面影。
いや、体はシエルなのだから面影があって当たり前なのだが、どこか雰囲気が違うのだ。
その違和感が消えたと形容しようか、上手く表現ができない。
『ザガン、貴様もいい加減にしろよ』
「…どうしよっかな」
『いい加減撃つぞ』
「君こそ珍しいじゃないか。主以外の人間に干渉するなんて」
『…どうなんだろうな』
「それは"表"の君かい?それとも"裏"の君?」
「表…裏…?」
『……』
ザガンとウリエル、わからない言葉の飛び交う中。
ザガンに向けて構えていたアリババの短剣に光が宿る。
それに気付いた皆の視線がそこに向いて、煙とともに現れたのはこの迷宮内に宿るもう1つのジン。。
「ア…アモン!!?」
アモンとザガンの巨大な姿に凛と佇むシエル、ウリエルの姿。
はぁ、と息をついたウリエルの背中にアラジンは違和感を感じた。
耽る沈黙は罪が香り
(エルさん…?)
_