開け放たれた扉。
その中にはまるで家族のように身を寄せ合う迷宮生物の姿があった。


『家…?』
「…みたいだよな…多分、この扉全部こいつらの家なんだよ」

『迷宮生物にもちゃんと家があるんだね』


ドアの入口には玄関のようにマットが敷いてあり
就寝するためのベッドがあり
一服をするためだろうか、机と椅子があり

皆がそれぞれ1つの家庭を築いていた。

どのように生きてきたのかはわからない。
しかしここでこの迷宮生物が生活をしていた事は目に見えて明らかだ。


『…迷宮の中でも命は育まれてるんだ…』
「…不思議ですね」
『うん』
「俺…正直まだここが迷宮の中っていう実感があまり湧きません」
『私も』


武器から力を抜かず驚く白龍と、複雑な気持ちで迷宮を見回すシエル。

隠れた抜け穴らしきものに行進していく斧やシャベルを携えた迷宮生物達を発見したモルジアナに、全員がその穴を覗く。
ハイホー、と歌を歌いながら行進していく姿は見かけに反しどこか愛執を感じなくもない。


『行ってみる?』
「そうだね。この扉が全部おうちならこっちに進んだほうが良さそうだし…」

『…ちょっと可愛い』
「シエルさん?」
『なんでもないよモルちゃん!』


そんなやり取りをした後、小さな抜け穴を順に抜けていく。
狭い小さな穴であったが体格の一番大きいアリババが通れることを最初に確認し、全員がその穴をくぐる。
穴の隙間から漏れていた明るい光。

そこは日の光のような明るさがあって、生物たちが大きなきのこを切っていたり食料を集めたりしている。


「さっきの家族に持って帰るためかな?」
『…微笑ましいね』
「うん!」


並んで行進をしていた向日葵のような迷宮生物の1匹が、籠の中に入れていた食料のようなものをばらまいて転んでしまった。
なにしてんだ!と言わんばかりに隣の生物が鳴く。
慌てて籠に食料を詰めなおす姿はまさに人間味すら感じる。

するとシエルの足元に転がってきた食料。


『はい』


屈んでそれを拾い、手渡してやるとギーッと返事をして向日葵たちはまた列を成して行った。
アリババは、迷宮には迷宮の秩序や暮らしがあって自分たちとなんら変わりのないものなのだと。
最初は訳がわからないと思っていたがそんなことは全くなかったのだと意気込んだ。


「落ち着いて"迷宮"の決まりを見極めて進めば…何も怖くなんかねーんだ!」

『迷宮の決まり…』
「あぁ。ザガンもきっと変なんかじゃねーんだよ…多分」


シエルの中の彼女はザガンを嫌う。
まだどうにも決められない偏見からザガンを判断するのは駄目なのだろう。

そうだね、とアリババにはにかみ、アラジンとアリババは「ハイホー♪」と歌を歌いながら向日葵たちと共に行進をしていった。
楽しげな雰囲気を纏い、迷宮の曲がり角を曲がる。



しかしその曲がり角で、全員は何度となる遭遇を果たす。



「ハチミツちょうだい?」







何度でも吃驚して

(でも、全てが生きている)



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なんか…終わり方短調ですいません…(・ω・`)
しかし100話突破!
ありがとうございます´`

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