「うわぁぁ!」
「すげーこれ全部2人が作ったのか!?」


湯気を立てるできたての料理を見て今にも涎を垂らしそうな表情でテーブルに噛り付くアラジンとアリババ。
一国の皇子に料理をさせてしまったことに臣下は少し嘆いていたがそれは本人の了承の上に成り立ったことだ。
誰も咎めることはないだろうが、主に仕えるものとしては複雑なのだろう。

程なくしてやって来たピスティもモルジアナも美味しそうとテーブルに付き昼食が始まる。


『大体作ったのは白龍くんだよ?私なんか全然…』
「そんな!シエル殿の作ったこの香菜の炒め物に比べたら…!」

「シエルのも白龍のもどっちのも美味いって!!」
「そうだよ!ねぇピスティちゃん、モルさん!」


「…結局私はピスティ"ちゃん"なのね…!」
『……ピスティさん?』
「あぁもうシエルはいい子だよ!!」


バッとピスティに抱き着かれ疑問符を飛ばしているとモルジアナが説明をしてくれた。
簡単に言えば身長が低く胸がないピスティをアラジンはお姉さんと認識しなかったということだ。
そしてピスティはいじけてしまったと、そう言う事らしい。

思わず抱き着いて来た彼女をよしよしと頭を撫でる。
そういうことをされるのが子ども扱いなのだがシエル的には無意識だった。


「…シエルって時々お姉さんとかお母さんみたいだよね」
『え…お母さん?』

「俺も思います。というか…シエル殿がどうにも姉上に似てるんです」

「あのお姉さんかい?」
「はい。身の回りこのとはなんでも自分でできるようになれと姉に仕込まれまして」
「へぇ〜お姉さん弟に厳しいんだね」
「俺にはほとんど母親代わりみたいなものです。そんな姉上にちょっと似てるんですよ、シエル殿」
『白龍くんのお姉さんか…』

「そっか〜それでこんなしっかりした子に…君は将来いいダンナ様になるよ」


白龍の姉、練白瑛を知っているのは白龍を除けばアラジンだけだ。
彼の言動を元にシエルに教育される白龍の姿を一部の人間は想像したことだろう。

そしてなんとなく今の白龍の姿に納得してしまう。
話をしている中ずっと食べることをやめないアラジンとアリババの2人にピスティは思わず見習うとかなにかしろよと突っ込んだ。
それはそれで彼らの長所なのだと思う。

ピスティと白龍の話が少し盛り上がっているテーブルの端で、モルジアナとアリババはその様子を見ていた。


「………煌帝国の皇子様と聞いて…想像していた人とだいぶ違いました」

「そうだよなぁ、でも…それでも白龍は地位ある皇子なんだろ?"迷宮攻略"なんて…命がけで危険なものにどうして付いて来る気になったんだろう…?」
『(……)』


地位のある皇子だから、
命がけででも賭けなければいけないものがあるから。

なにより、煌帝国の力は借りれないから…だろう。

偶然聞こえてしまった2人の会話にシエルは影を落とす。
だからこそシエルはこの迷宮攻略について来た。


―白龍に何かあったら自分が、




「島が見えてきたよ!」

『!』



ここから先、まだ迷宮までは遠い。

ザガンの迷宮のあるこの孤島はシンドリアの国土ではない。
そして孤島には先住民がいるから失礼のないように、ということであった。

どんな人達だろうか、わからないことは多い。



「着いたー!」



わからないなら知ればいい。
そして少年少女は歩み出す。







蒼海の魔窟へと

(踏み出す勇気は)
(心の片隅で燃え盛る業火)

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