いつも名前に対して悪い虫(と言うなの男)が寄り付かないか目を光らせている拓人であるが、彼の行動パターンも観察していれば分かってくる。

どういう時にサッカー部の業務をしに行くのか。
どういう時に監督と練習についての話をしに行くのか。

その時間帯を見計らって名前に声をかけ、何かしら約束を取り付ける部員は結構いる。


「ねぇ名前チャン、今日の放課後ゲーセン行かない?」


狩屋マサキは転校してきてからのタイムラグがあったため拓人の行動パターンの予測がほかの部員よりも遅かった。
故に放課後名前を何かに誘うということは初めて。
もしもああのシスコンに何か釘を刺されていたりでもしたらこの時点で遊びに行くことはアウトだろう。


『げーせん?』
「そ!名前チャン行ったことある?」
『話には聞いたことはあるけど…実際には行ったことないなぁ…』
「じゃあ行ってみない?」
『私なんかでいいの?』
「うん。名前チャンがいいんだよ」
『じゃあ行ってみたいな!』


よっしゃぁぁぁぁとマサキはこの時点で内心思いっきりガッツポーズをしていた。
ゲーセンは場所によっては治安が良いとは言い切れない場所がある。
そう教えこまれていたとしたらまず断られるだろうと思っていたがきっとあのシスコンは汚いことを名前の耳に入れるのも嫌だったのだろう。
1割の感謝と9割の煩わしさを感じつつ放課後の約束を取り付ける。

誰も見られていないことを確認したつもりのマサキだったが、遠目でこの現場を目撃されていたとは思いもしなかっただろう。











『ここが"げーせん"!!』
「どう?面白そうでしょ」
『うん!あ、ねぇマサキくん!あれ何?』
「あれはUFOキャッチャ−だよ。このボタンでアームを動かして…」
『へぇー!』



「狩屋…アイツは明日ハーモニクスだな」
「落ち着け神童」


ゲーセン独特の騒音にかき消され物陰に隠れた声は聞こえていない。
先程名前に約束を取り付けた際にあの現場は蘭丸に目撃されていたのだ。

一応名前を気にしている手前名前の兄兼幼馴染の拓人に言わないわけにもいかず。
マサキに殴りかかりに行きそうな拓人をなんとか引き止め様子を伺う。
思い隣で今にも化身でも出せそうな程のオーラを身に纏っているシスコンが自分の幼馴染だとは正直な話思いたくないのだが、そうすると名前も幼馴染だということを否定することになるので甘んじて受け入れることにする。


『これ可愛い〜』
「あ、俺それ得意だから取ろうか?」
『本当っ?』


小さめの猫のぬいぐるみを見ている名前にマサキが好感度をあげようと財布を取り出し100円玉を投入口へ投下した。
初めて見るUFOキャッチャーへのドキドキワクワクとした期待が隠しきれずじっとマサキを見つめる。

見られていることに緊張は感じるもののマサキは結構ゲーセン慣れしているのであまり気にすることはなかった。
狙いを定めゆっくりと、そして的確にアームを操作していく。


「クッ…こんなことなら俺が先に名前をゲーセンに連れて行くんだった…!」
「オイどんな後悔の仕方だよ」
「"お兄ちゃんありがとう!これ一生大事にするね!"とか言われたいだろ…!?」
「……あーはいはい」


「お」
『落ちたーっ!』
「はい名前チャン」


手馴れた雰囲気で取り出し口に落ちてきたぬいぐるみを取り出し名前にそれを差し出すマサキ。
名前はパァァと笑顔を咲かせてぬいぐるみを受け取る。


『マサキくんありがとう!これ一生大事にするね!』

「(あ)」
「(名前ーーーー!!!!)」
「…神童?おーいしっかりしろ」
「……」
「駄目だこりゃ…」


この日あまりのショックに気を失った拓人を蘭丸はしょうがなく抱えて帰ることになった。
これで記憶でも飛んで狩屋に被害がなければいいが、と蘭丸は淡い期待を抱いたがぬいぐるみという物的証拠をもってマサキは制裁されることとなったのだった。





ふとどきものには制裁を

(狩屋ぁあぁぁぁ!)
(ゲッ、キャプテン!?)

(見てー蘭ちゃん!これ昨日マサキくんに教えてもらいながら頑張って取ったの!)
(自分でも取れるようになったんだな…)
(え?)
(いやなんでもない)

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