「名前、今日一緒に帰らねぇ?」
『あー…ごめんねマサキ!今日は天馬くんとちょっと買い物行くんだ!』


ピシリ、マサキの周りの空気が硬直したのに名前は気付くことができなかった。
そしてマサキの頭の中でぐるぐると思考が巡り始める。

―自分は名前の彼氏だよな?
―天馬くんとはただの友達だよな?
―なんで俺を誘わないで天馬と?

マイナスな思考がマサキの頭を締め始め目の前でニコニコと笑う名前に逆に違和感を覚える。
なぜマサキの周りの空気が凍ったが理解もしていない名前はただマサキを見て笑っているだけ。
それがマサキの胸に黒くてモヤモヤしたものを作り出させた。


『結構前から言ってたんだけどね!天馬くんがこの前いいお店見つけたからーって!』


嫉妬、と認めるにはまだ幼い感情。


「へぇ〜…そうなんだ」


名前が好きで、生まれて初めて自分から人を好きになって告白した相手に対して思う気持ちは複雑だ。

拘束したくない。でも拘束したい。
―せっかく捕まえたのに、離したくない。
大人しく受け入れたフリをして、でも心はとても大人しくなんてはいられなくて。


「……それ、今日じゃないとダメなの?」
『え?』
「あ、いやなんでもない」


思わず自分じゃない友達との約束を拒みたくて出てきた言葉は無意識の内だった。
すると今度は名前が何かを考える素振りを見せる。
何を考えることがあるのか、マサキはじっとその様子を見ていたが表情は一向に変わらない。

明るい性格の奴は表情に陰陽が出やすい筈なのだが名前は意外にもポーカーフェイス。
思考を終え顔を上げた名前の表情も最初思考を始めた時と何ら変わりない表情だった。


『じゃあマサキも一緒に来る?』
「…え?何俺も行っていい買い物なの?」

『ホントはちょっと待ってて欲しかったんだけどね!マサキがそんな寂しそうな顔するから』


そう言って名前はマサキの手を取ったがマサキは心を見透かされた様な感覚に陥って少し不貞腐れたように顔を背けた。


「…そんな顔してない」
『してるから言ってるの!ほら行こ!天馬くん待ってる!』


程よい力で引っ張られ、マサキと名前は動き出す。
そこで他の男が出てくるのが気に食わないと思いながらも引かれる手の温度にどこか心洗われてしまうのだった。





心を引く君の手

(おーい天馬くーん)
(あ、名前…って狩屋も!?)
(えへへー連れて来ちゃった)
(今日狩屋のスパイク買ってプレゼントするんだーって言ってたのに?)
(え?)

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