きっと私の恋は実らない。
何となく気が付いていた。私は彼にとって邪魔でしかないと。
まず、私が恋だなんて言うことがおこがましかったのかもしれない。
だって彼は私と目があったら凄く悲しそうな顔をするから。
俺はあいつが苦手だ。
クラスでも部活でも、いっつも何かをするときは他人の為。
正直いつも考えてるかわからなかった。
「苗字さん、私日直だし手伝おうか?」
『いいよいいよ、私がやりたくてやってるんだし』
またそうして苗字は笑う。
誰かを頼ればいいのにあいつはそれをしない。
あぁもうなんで俺がこんなに気にしなきゃいけないんだよ。
ムカつく、募る思いをぶつけるのは良くも悪くもサッカーボールだ。
でもそんな部活の時だって視界にチラつくあいつの姿。
マネージャー業を忙しそうにこなしながら、なぜか時々視線が交わる。
すぐに反らした視線、もう一度見てみれば空野さんが苗字に近付いて行っていた。
多分手伝う、とでも言おうとしているのだろう。
だけど苗字が首を横振っているのが見える。
また断ったのか、空野さんが申し訳なさそうな顔をしながらも苗字から離れていく。
なんで一人でやろうとすんだよ。
そういうところがイライラすんだっての。
思って視線を外そうとした瞬間、苗字の体がグラついた。
「苗字!」
地面に倒れ込んだ小さな体に目を見開いて駆け寄る。
慌てて周りの奴らも寄ってきたけどそんなこと今の俺にはどうでもよかった。
苗字を抱き上げて校舎内へと足を向ける。
「俺が運んできます!」
「狩屋!?」
『狩屋、くん……?』
「じっとしてろよ」
予想以上に軽かった苗字を抱きかかえたまま校舎内へ。
抵抗する気力もないのか苗字はずっと俺に大人しく抱かれたままだった。
「なんでだよ」
『え…?』
「なんでお前は誰かを頼ろうとしないんだよ」
『それは……私なんかが誰かを頼るなんて…』
「……俺は苗字のそういうとこが嫌いなんだよ」
『…』
「でも」
腕の中の苗字の表情が一気に暗くなったような気がした。
でもやっぱり俺はこうやって俯いて儚げにしている苗字が苦手だって改めて感じた。
そしてそれと同時に俺は苗字に対するもう一つの気持ちに対峙することとなった。
「苗字みたいな頼り下手な奴には俺みたいな奴が必要だろ?」
遠回りな言い回しだけど苗字 ら気付いてくれるだろう。
むしろ気付いてくれなかったら俺恥ずかしすぎんだろ、と思ったけど苗字を見てみれば思いっきり顔を真っ赤にしていたのでその心配はいらなかったようだ。
背中を任せる相手
(君なら大丈夫かなって)
(あんたならいいかなって)
((そう思えるから))
-------
マサキって葵のことなんて呼んでたか確認できず…!
うわぁぁすいません分かり次第修正します