選手よりも疲れないとはいえ、マネージャー業をしていても疲れるものは疲れる。
休憩中はタオルやドリンク、それ以外の時は次の休憩に備えての準備。
仕事が少ないときはベンチから練習風景を見学できるものの大体は仕事をしなければいけない。

そんな時の為の携帯栄養充電器、お菓子。


『やっぱりお菓子はいいよねー』
「名前先輩またお菓子ですか?」
『美味しいよ〜葵ちゃんもいる?』
「じゃあちょっとだけ…」
『そうこなくっちゃ〜』


葵に小分けになっている小枝チョコの袋を渡す。
茜や水鳥にも渡そうと思ったが辺りに見当たらず後で見かけたら渡そうと思ってのんびりと貴重な休憩時間を味わう。

だが休憩時間ほど短く感じるものはないだろう。
あっという間に監督の休憩コールが響き、ベンチは一層忙しさを増した。
お菓子をベンチの端に置き用意していたドリンクたちを葵と共に配り出す。


「名前…さっきまたお菓子食ってたろ」
『え?ばれてた?はいこれドリンク』
「ちゅーか!あれコンビニで売ってる期間限定のっしょ?俺にもくんね?」
『いいよ〜』


浜野の言った通り、今食べていたあのお菓子は今日発売のコンビニでしか売っていない期間限定のお菓子だ。
それを知っている辺り浜野もなかなかもお菓子通と言えよう。
帰りにも同じものを買って帰ろうとしていたので少しぐらいなくなる事はこの際厭わない。


「ずりーぞ浜野。名前俺も」
「なら俺も貰っていいか?」

「なになに!先輩お菓子ですかー!?」
「僕らも欲しいですー!」
「」

『えー!?そんなにはないよ?』


お菓子の数と催促する人数が明らかに不釣り合いで名前がタオル片手に困惑し始める。
そんな名前達の会話を遠目で見つめていた南沢。


「じゃあじゃんけんで決めましょうよ!」
『じゃあ…えっと、3人までね』


気にくわねぇ。

無言でドリンクで水分補給しながら様子を伺った。
どんどん広がっていく騒ぎの輪に呼応して眉間の皺が寄っていった。
南沢の様子に気付かずに進行していくプチじゃんけん大会。
なぜかほぼ部員全員の大所帯のじゃんけんとなってしまい、当たり前だがなかなか決着はつかなくなってくる。

面倒だからと2人一組で勝ち抜き戦にしていき、最終的に残ったのは神童と狩屋だった。

どこか誇らしげに名前からお菓子を勝ち取った2人。
もうそろそろかと南沢がベンチから立ち上がって自分の分のお菓子を頬張る名前に接近する。


「俺も貰うぜ」

『え?お菓子もうないよ?』
「こっち貰うからいーんだよ」


そういって南沢は名前に口付け名前から部員全員たちが視線を集める中遠慮なく目当てのものを奪い去っていった。
まどろっこしい事は嫌いな南沢はニヤリと笑う。
これは最初から部員たちに敵対心を喪失させるための正に"甘い罠"だったのだ。





甘い罠にはご注意

(も〜…南沢さんにはちゃんと取っておいたのに…)
(俺は名前から貰いてぇんだよ)

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