最近、下校中に不審者が出るとの情報が下校前に伝えられた。
かといってあまり気にしないで下校をしようとする生徒たち。
名前も勿論そんなことを気にすることもなく普通に下校をしようとしている。

ただ単に部活を終え、一人で帰ろうと校門に向かっていた。
夕方少し遅くなっていれば辺りは結構な暗さだ。
それでも別に大丈夫だろうと携帯電話を開きながら時間を確認し、ローファーを打ち鳴らし歩いていく。
その背後から沢山の足音が連なって足音が聞こえて来る。

が、これが不審者ではないことぐらい名前にはわかっていた。

第一ここはまだ門をくぐっていない、ギリギリ学校内なのだから。


「名前!一緒に帰らね?」
『先輩達…?』

「浜野くん…それ抜け駆けですよ」
「ほら、最近危ないらしいし俺が送ってこうと思ってな」
「おい何さりげなくアピールしてんだ霧野」
『…なら一緒に帰ればいいじゃないですか?』

「「「「それじゃ意味ない」」」」

『……』


名前が一人誰かと帰ると意思表示をすればいいのだが名前はそれをしない。
まず前提として、名前が思っていることは時に奇抜であり何を考えているかは全くわからないからだ。


「名前は俺と帰るって約束してたんだよ」
「いや、名前がそんな約束するとは思えない」
「キャプテンだからって横暴はいただけませんよ神童くん」


言い争いの芽は名前だか名前は我関せずといった表情で成り行きを見守る。


「ちゅーかジャンケンで決めればいいんじゃね?」

「いや、間を取って俺が名前と一緒に帰るっていうのはどうです先輩方?」
「「「「狩屋!!?」」」」
『…お』


新たな人物の乱入に思わず名前もポツ、と声を上げたが別にマサキに加勢する気はさらさらない。

ここまでくると見るのにも疲れるのか、ちょこんと座り込み見学を決め込む。
マサキは1つ上の先輩でも容赦はしないらしい、名前と帰る為にあの手この手の口車を巧みに吐き出していった。
だがそれに乗らないのが先輩としての意地か、その口車に乗せられる者もいない。
凄い攻防だなーと他人事のように様子を見守りいい加減飽きてきた頃。


「名前ちゃん?」
『!ヒロトさん』
「やっぱり名前ちゃんだ。今帰りなの?」
『はいっ』


校門近くに止まった車に喜々として近寄る名前。
オープンになっている運転席に座っていたヒロトと名前は昔馴染みで、名前もヒロトに懐いているのだ。
そんなヒロトの登場に、言い争いに熱中していた全員が気付くことはなかった。


「じゃあ送ってくよ。最近は物騒らしいしね」
『いいんですか?』

「可愛い名前ちゃんの為なら」


そう言った車に恥ずかしい半分で乗り込み、名前が去って行ったのを遅れて気付いた全員が背後から「あぁぁぁ!!!」と叫んだのは言うまでもない。





漁夫の利ってこう言うこと

(名前今日こそ一緒に帰ろう!)
(しばらくは名前さんが送ってくれるそうなんで…遠慮します)
((((なん…だと…!?))))
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