校則なんてあってないようなもので。
生徒たちの大多数は携帯やらゲームやらを持ってきているし先生だって黙認している。
没収するのも面倒だし今時はモンスターペアレントも何を言ってくるかわからない。
それを盾に私たち生徒は非行に走るのだろうけど度さえ越さなければ何の問題もないだろう。

そんな私の愛用品はこれ。


「また聞いてたのか?」
『だって暇だしあの授業』
「まぁそうだけど…一応聞いとけよ。ノート貸さないぜ?」
『えー…それは困る』


バレない為にポケットからシャツの内側、背中経由で耳に装着したヘッドホン。
髪の毛で耳を隠してしまえば大概バレることはない。

無駄な話が長い先生の授業にはこれが必須アイテムだ。
なんたってあの先生は授業が暇な癖に寝たら成績は落とすんだから。


『蘭丸も聞く?』
「…じゃあ半分」
『んー』


結局聞くんじゃん、と右耳のヘッドホンを外して蘭丸に手渡せば片方がなくなって聞こえる音が小さくなった。

コードの長さから必然的に近くなる蘭丸の体。
顔もかなり近くに接近してきて少しドキッとしたのは言うまでもないだろう。


「何の曲?」
『んっとねーミラ様の新曲』
「…知らないな」
『黙って聞いてみてよ、いい曲だからさ!』


自分の好きなものは彼氏にも好きになって欲しい、と言ったら我が儘になるのかな。
これくらいなら大丈夫だよねと言い聞かせて流している曲は最近私がハマっている曲。
片方だけだと聞こえる音が小さい為音量を調節した。

しばらくは意識を耳に預け、私も蘭丸も曲を大人しく聞いている。
心地よく耳に駆け抜けていく音はとても心地がいい。


『どう?』
「ん…まぁいいんじゃないか?」

『ちょ、反応軽くない?』


ヘッドホンを付けたまま空いている片方の耳から蘭丸の声を聞き取る。
すると蘭丸はヘッドホンを外して右手にそれを収めた。
どうしたんだろうと思って私もヘッドホンを一回外して蘭丸を見やった。

そして徐々に近付いてくる蘭丸の顔。
なに、と聞き返す前に先に口に開いたのは蘭丸だった。


「俺は名前の声を聞くのが1番好きだしな」
『え?―っ』


私の声を聞くのが好きって言ったクセに声を紡ぐ唇が塞がれ、声が出せなくなる。
だから誰にも聞かせたくないんだけどな、と言われてしまえば私に反撃の術は1つしかない。

お返しと言わんばかりに離れていった唇をこちらから塞いでやれば蘭丸がヘッドホンを取り落としていた。





半分こヘッドホン

(…それは不意打ちだろ…)
(蘭丸には言われたくないですーっ!)

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