この日、神童家には一大事の事件が発生していた。


「大丈夫か名前!?お兄ちゃんがついてるからな!
おい替えの氷枕はまだか!」

「はい拓人様!ただ今お持ちします!」
「急げ!」


そう。名前が熱を出したのだ。

たかがそんなことか、と思われればそれまでなのだが神童家にとっては何よりもの大事件なのだ。
拓人を筆頭に名前を可愛がるメイド達使用人達が全力で看病に取り掛かる。

使用人達からすれば、名前は屋敷の中では癒しの存在に近い。
そんな名前が熱を出したとなれば神童家の屋敷は揺れるしかない。
こんなところで神のタクトの実力と言おう、華麗な指示で無駄のない看病を行う。


『お兄ちゃん…部活は…?』
「部活は大事だが部活よりも名前の方が大切だ!」
『ごめんね…』
「気にするな名前。俺が好きでやってることだからな」


熱のせいで少ししおらしい様子の名前の手を握り、平熱より高い手の温度にまた拓人の胸の内の使命感に火がついた。
バッと立ち上がり物凄い勢いでキッチンへと駆けて行く。

向かった先は使用人も立ち入るキッチン。
普段はあまり立ち入らないキッチンに拓人が現れたことに使用人たちは目を見開いたが拓人の上げた声に再び使用人たちが士気を上げた。


「林檎はどこだ!?俺が剥く!」

「は、はい拓人様!林檎ならここに!」
「おかゆの調理は我々にお任せください!」

「よし、包丁!」


調理用の包丁を受け取り林檎に包丁を向けキッチンは熱気に包まれる。
謎の一致団結を果たし、使用人と主の連携を見せ作られたおかゆ。

なぜ病人にはおかゆなのだろう。
とにかくあの味気ないおかゆを名前好みに仕立て上げ林檎を剥こうとしていた拓人を伺う。
そしてビックリ使用人たちは目を見開いた。


「た、拓人様…!?」
「その林檎は…!」

「どうだ…これこそウサギ林檎だ……!!」

「「「「おおぉぉぉー!」」」」


四つ切にした林檎の皮をウサギの耳のように切り取るウサギ林檎…ではなく。
包丁で象ったとは思えない、まるで彫刻のように美しいウサギだった。


「さすがです拓人様!」
「これなら名前様も喜ばれるでしょう!」


あれ林檎の剥き方根本的に違わないか?
おそれ奥もそうツッコめる者はこの場にはいなかった。
というか名前を思うあまりその考えに至るものがいなかっただけか。


「よし、行くぞ!」
「「「「はい!」」」」


後にその林檎は『わー凄い!』と言われながらも名前の胃袋の中に収まることはなかった。






才能発揮はフィールドで

(もったいなくて食べれないなぁ…)
(……!)

((((拓人様…!))))

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