『マサキー早くおいでよ!』
「ちょっと待ってくださいって」
『早くしないと混んじゃうしさ!』


学校帰りじゃない道すがらで。
本日は休日土曜日。私服姿で名前とマサキはとある場所に訪れていた。
誰もが一度は訪れたことがあるであろうゲームセンター。所謂ゲーセンというもの。
恋人になってから2人で初めて出かける、ということでどこがいいとマサキが名前に聞いたところ『ゲーセンがいい!』と言う強い意見でここに来ることになったのだ。

もう少し洒落っ気のあるところに行こうと言われるのかと思っていたマサキとしては拍子抜けだったが行きやすくていいか、と承諾。
だが行きやすいという予想に反して騒がしいという難点がある。

女独特の強さというのか年上の余裕というか騒がしさをものともせずマサキを引っ張っていく名前。



『ねぇねぇマサキ!和太鼓の名人やらない?』
「和太鼓の名人?……って、あの太鼓のゲームですか?」
『そう!私アレ得意なの!』


意気揚々と名前が小さな子供が母親と和太鼓形のコントローラーを叩いている姿を指差す。
昔からある、所謂音楽ゲームというやつだ。
音楽に合わせて太鼓の面と淵を棒で叩くという単純ではあるが難易度が上がれば単純な筈のその動作の難しさは比ではない。


「先輩、ホントに得意なんですか?」
『あ、なにその疑いの目は!』
「だって先輩いっつもドジだったりするじゃないですか」

『マサキひっどい!見返してやるから覚悟しなさいよ!』
「へぇ〜…まぁ頑張って下さい」

『もー!』


まだ実力が知れない以上は信じられないのでマサキは名前を弄る内容の一つとして考えていた。
学校での日常生活では正直名前がそんなことができるタマだとは思っておらず。

前の親子がいなくなる間マサキは名前を弄り倒していたが後にその実力を知ることになる。




『私の勝ちー!!』
「先輩…どういう反射神経してるんスか」
『へっへーん!だから言ったでしょ得意だって!』

「それにしても…まさか負けるとは…」


完敗を期して名前の実力を知ったマサキは太鼓の前に立ち項垂れる。
一方、本当に陰の実力者だったらしい名前は太鼓を叩くための棒を持って『やったー!』とはしゃいでいた。


『悔しい?悔しい?』
「…そりゃ悔しいですよ」
『ふふーん…なら良かった。次こっち!』
「え?」


項垂れるマサキを今度は名前が手を引いていく。
今の勝利で機嫌のよくなった名前が先導していく先には沢山の女の人を筆頭にカップルが見え隠れするプリクラのコーナー。
なぜこの流れでプリクラに連れてこられたのかがわからない。
マサキは困惑しながらもプリクラの料金投入口にお金を入れる名前を見守る。


「ちょ、先輩俺が出しますって!」
『いいの!はいほら寄って寄って!』


こういう時は自分が奢るつもりだったのに出し損ねたと思っていた矢先に全ての撮影設定を終えた名前が思いっきりマサキの井出を引っ張った。



『マサキ!はいチーズ!!』



そう言われたものの撮られたプリクラの自分は随分間抜けな顔をしていた。

落書きで散々いろいろなことを書かれてしまったマサキだったが、名前が最後まで笑っていたのを見てそんなことどうでもいいという結論に至ってしまう自分。
半分に切られたプリクラに間抜け面の自分の隣に並んだ名前の笑顔。

こんな思い出が残るのであれば最初のデートをここにしてよかったと言ってはやらなくても心の内で思うマサキだった。






First Date

(…なんでさっきあの音ゲーやったんすか)
(え?だって悔しい思いしたりしたほうが最初のデート覚えててくれそうでしょ?)
(…えぇ〜……)
(だからプリクラにも書いたでしょ)
(…"太鼓へたくそ!"ってな…!)
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