出会いは成績目当てで入った委員会だった。
面倒にも任されたプリントを書いている最中、ずっと俺の隣で寝腐っていた後輩苗字。


「(……随分寝る奴だな)」


委員会が始まる前からこの席で座っていたこいつはきっと委員会が開かれるこの教室を使う1年の生徒だろう。
いつも委員会になると指定席と言わんばかりに机に突っ伏している姿を見かける。
幸せそうに寝ている苗字を見てると苛立ちが湧いて出てくるが幸せそうな寝顔にその気すら失せる。


『…てんまのばかー』
「……」


でも時に漏れる寝言はなぜかあの後輩の名前。
最初こそイラッとしていたが既に俺の頭の中を占めるのはなぜか苦しい感情だった。
きっと俺が見ているこの寝顔なんかよりあの松風はもっとこいつを知っているんだろう。

サラリ、書き終えたプリント。
俺とこいつしかいない無音の教室に静かに寝息だけが響く。

予想外に時間がかかってしまい、この教室どころか校舎内に人がいるのかすらも怪しい時間になってしまった。
今から部活に行っても正直無駄だと思う。
そして寝腐っている苗字をこのまま放置していってもいいものか。


「…オイ」
『……ん…』
「……(起きねぇ…)」


とりあえず声をかけてみたものの反応はない。
プリントは教卓に置いとけばいいらしいし、とりあえずプリントを放置。


「…オイ!」
『うあっ、はいぃぃ!?』
「うぉっ」


肩を揺らして思いっきり声をかけたらあっちも思いっきり飛び上がってこっちがビックリした。
顔を上げた名前とバッチリ目が合ったらなぜか名前がもの凄い勢いで起立して椅子がけたたましい音を立てて倒れる。
その音にまたビックリした苗字が肩を飛び上がらせてビックリしていた。

どうにも苗字は落ち着きがない奴らしい。


『ご、ごめんなさい!』
「いや…別にいいけどよ」

『倉間先輩確か部活もあるんですよね…!』
「…苗字俺の部活知ってたか?」
『あ……!その、天馬から…』


…結局アイツなのか。
慌てたように両手を振る苗字、そんなに慌てなくてもいいだろ。
『実は天馬は幼馴染なんで…サッカー部のことはちょっと知ってるんです』
「幼馴染……?」
『はい!だから倉間先輩のことはよく……っ!』

「…俺のこと……?」
『いっ!今のは聞かなかった方向でお願いします!』


あぁ、そんなこと聞いちまったら。



「…一緒に帰るか?」
『え?』

「行くぞ」
『あ……』



顔を赤く染めた苗字の手を引いて薄暗い教室を出て行った。
ぽかんとした表情のままの苗字の額にひっそりと唇を落とし、俺は何食わぬ顔で前を歩いて行った。

さぁ来週の委員会が楽しみだな。





週1の出会いに乾杯を

(ほら置いてくぞ)
(え……?え…!?)

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