名前はお日様園の最年長な中学三年生である。
元がさっぱりした性格な故、誤解を招きやすいのだが彼女がクールなだけであって別に冷たい訳ではない。
ただ感情表現が少し下手くそなだけ。


『緑川さん…まだ?』
「ごめんちょっと待ってね!おーい社長!洗面所のヘアゴム取ってきてー!」


お日様園の朝は騒がしい。
出かける準備をするのはまず手の掛かる小さい子から順番だ。
下から順となれば最後になるのは最年長の名前の準備が最後になってしまうのは必然である。
小さければ上の子が手伝ってくれるが上の子が下の子を手伝わせるわけにも行かず。

なので名前は今日、久しぶりにお日様園に帰ってきていた緑川とヒロトにいつも頭の左上で一つに結んでるポニーテールを結ってもらっていた。
とは言っても結っているのは緑川でヒロトは雑用に使われているだけだが。


「ねぇ緑川、ヘアゴム赤と緑あるんだけどどっちがいいと思う?」
『私はどっちでもいいんですけど』
「俺は赤がいいと思うな」
「いやいや緑だよ!」
「ここは赤で!」
『…あのー…?』

「「名前はどっちがいい!?」」

『…えー……』


どっちでもいいと言ったのになんて話を聴かない大人達なんだと絶対言ってはならない事を内心考えながら名前は緑川に髪の毛の束を結われている状態のまま硬直していた。
動いたら綺麗に結えないから動かないだけなのだがその背後でヒロトと緑川が火花が散らしている。

正直早くして欲しいところだが自分が動くといつものように苦労をしながら自分で髪を括らなければならない。
緑川はいつも自分で括っている分髪の扱いには信頼があるのだがどうにも社長のヒロトとセットになると何故か騒がしくなってしまうらしい。
なかなか作業が進んでくれず刻一刻と進むのは時間だけ。


「名前にはこっちの方が可愛いよ!」
「いやこっちの方が可愛い!」


まだ討論は続いている。
緑川も髪の毛の束をよく離さないなと思ったが髪に対する思いの違いだろうか。


『…じゃああの青いゴムでお願いします』


名前は机の上に出しっぱなしにしていたいつも使っているゴムを指差した。
え?と言う声が2つ重なり名前が思わず失笑と共にため息が漏れる。

なぜ近くにあったこのゴムに気付かなかったのか。まぁ大目に見ておいておこう。



『…赤いゴムも緑のゴムも今度使いますから。早く括ってください』



だから最初に言った通り。
彼女は感情表現が下手くそなのです。





下手な感謝の仕方

(じゃあ今度は赤で)
(いや緑だね)

(……はぁ)

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