ピンポーン


大きな神童邸の中へ無機質なインターフォン。
来たか、なんとなく来る事を予測していた2人の名を使用人から紡がれ、神童は2人を通すことを許可する。
少し落ち着きのない足音と対照的な静かな足音。

段々と近づいてくる2人の足音に神童はピアノを弾いていた手を止めた。



『拓斗!』



ノックもなしに部屋のドアを開けた大きな足音の持ち主にやれやれといった表情でピアノの席を立つ。


「霧野も一緒だろ?」
『そうよ、蘭ちゃんこっち』
「わかってるよ」


廊下へ顔を出し霧野に手を振った名前にゆっくりとそちらへ向かう霧野が声を返す。
幼い頃からよく来るこの屋敷で迷うことはない。


「名前に連れられて来たんだろ?」
「ご名答」

『し、失敬な!私は良かれと思って連れてきてあげてるの!』
「はいはい」


名前のこの性格とは裏腹な天真爛漫には慣れたもので。
名前が2人を連れ回し神童、霧野がお目付け役。
そんな関係を続けて早数年。

今となってもその関係は変わることなく、こうして名前達の関係が続いている。


『拓人。私拓斗の淹れた紅茶飲みたい』
「今からか?」

「じゃ、俺は名前のクッキーを希望したい所だな」
『…私のじゃ拓人のお茶に釣り合わないわよ?』
「そうか?俺は好きだけど」
「霧野に同じく」

『ほ、褒めても何も出ないんだからからね!じゃあ蘭ちゃん手伝って。キッチン行くわよ!』


照れ隠しなのか捲くし立てる様に言って神童の自室から廊下へと駆けて行った。
2人はその様子に少し笑みを浮かべ名前を追いかける。

行き先はキッチン。3人並んでお茶の準備。



「紅茶何がいい?」

『ダージリン!あ、蘭ちゃんボール取って』
「ほい」


慣れた手つきで紅茶を入れ、また慣れた手つきでクッキーを作っていく。


しばらくすれば暖かい紅茶に出来立てのクッキーがテーブルに並ぶ。
お互いに届くいい香りを発しており、息を吸い込んだだけで胸がいっぱいになりそうだ。


『相変わらずいい香り…。さすが拓人』


カチャリとティーカップに入れられたそれを手に取れば広がる香り。


「霧野もだいぶ手伝いの腕上がったんじゃないのか?」
「なんだよそれ」


神童と霧野も席に着き、ティーカップに手をかける。
名前はそんな2人を見てクスリと笑った。



『いただきます』




昔も今も

(やっぱ拓人んち来たらこれよね)
(それ目当てか?)
(まさか)

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